第4話 班分け
夏休みの宿泊学習の日程が配られた。
「グループ分けは自分たちで決めてください。1班5人か6人で、6班になるように。」
担任の原田が言うと、クラスは一斉にガヤガヤし始めた。
こういう場面が、
「
ため息と一緒に呟く。
「誰でもいいから、拾ってくれるの待つか。」
自分の席で、他人事のように皆の動きをボーッと見ていた、その時、
「綾野さん、うちのグループ入らない?」
比較的優しくて、大人しい子ばかりが揃ったグループが、声をかけてきた。
「え?いいの?」
そう言って、返事をしようとした時だった。
「ごめんねぇ、咲良は、うちのグループだからさ~。」
中野真矢が割って入った。先のグループの子は怯えるように、
「ご…ごめんね、綾野さん。」
そう言って逃げてしまった。
「いいよね?咲良。」
「ご自由に。」
一番イヤな女たちに囲まれて、3日間も寝起きを共にしないといけないのか。咲良は、正直、ウンザリした。
「綾野咲良の鞄の中から出てきただと?」
「ええ。驚きましたよ。自分が行ったら、彼女がその鍵を手に持ってたんですから。」
竹内は、その時の状況を鷲尾に話した。
「それは…綾野咲良じゃないということだな。」
「そうですよね。」
「恐らく、鞄を水浸しにしたのは、彼女に鍵の存在を知らせるためだったんじゃないか?」
「なるほど。彼女がいつまでも気付かないということも考えられますからね。」
「綾野咲良を犯人にしたい奴がいるようだな、やはり。」
「そうみたいですね。」
子供だましだな、と鷲尾は思う。計画が雑だ。しかし…
「どっちが先なんだろうな?」
「どっち…とは?」
「日野涼子が落ちてしまったから、綾野咲良を犯人にしようと思ったのか、最初から綾野咲良を犯人に仕立て上げるつもりで、日野涼子を落とすことを企てたのか…。」
「3階建ての校舎の屋上ですからねえ…。」
「微妙な高さなんだよな。確実に口を封じるためには、確実に殺す必要がある。日野涼子が生きていて犯人の名前を言ってしまえばアウトだからな。」
「…となると…」
「恐らく、『落ちた』のが先だったんだろうなあ。」
「うーん…。」
「おい、そう言えば、そっちはどうなんだ?意識は戻りそうなのか?」
「まだ、何とも…。」
「そうか〜。日野涼子が目を覚ましてくれるとありがたいんだがなあ。」
「ねえ、うちら捕まらないよね?」
「大丈夫だって。男どもには、金払ってやったし、鍵は咲良の鞄の中に放り込んで水かけといた。うちらがアリバイ合わしときゃバレやしないって。」
中野真矢は笑いながらチューハイの缶を開ける。
「
呼びかける真矢の声に顔を向けることもなく、
「トマトジュース。」
「マイペースだねえ。」
真矢は、そんな萌子のことを笑うが、清恵は時々不思議に思う。何故、萌子は、こんな酷い女と一緒にいるんだろう?こんなに綺麗で大人しくて頭もいい子なのに。真矢の
「今回のことだってさあ、元はと言えば、涼子が悪いんじゃん。咲良をいじめるのはもうやめてほしい、とかさあ。うちら、あいつと遊んでやってただけじゃんね、ねえ、萌子。」
「そうだねえ。」
聞いているのか聞いていないのか、興味がないような返事をする萌子。相変わらずゲームに夢中だ。
「だから、ちょーっとお仕置きしてやったんじゃん。男いっぱい紹介してやっただけじゃん?」
清恵は、正直、涼子を
萌子も、あんな酷いことをされている所の隣で、知らん顔をしてゲームをし続けていた。時々、真矢に聞かれて、飲み物を持ってきてもらっていた。この女も何者なんだろう?と思う。
「それにしても、本当に落ちるとはね。よっぽど男たちが怖かったんだね。」
アハハハハ。愉快そうに真矢は笑う。
清恵は思う。あれは事故じゃない。計画された殺人だ。一命はとりとめた涼子だが、「犯人」のことを聞かれても、恐怖で絶対に口を割らないであろうことは計算済みなのだろう。
そして、犯人を綾野咲良に仕立て上げる。何故そこまで彼女に固執するのかも、清恵は知らない。
「はぁ…眠くなったわ。清恵、もう帰っていいよ。おやすみ〜。」
そう言って、いつも清恵だけ放り出される。萌子は血が繋がっているから、という理由からだろうか?
何か他に理由があるのではないかと、清恵は疑わずにはいられなかった。
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