第17話:話を整理したんだが

 珊瑚さんの話を整理してみた。俺と珊瑚さんは、俺が大学入学して数か月したころ、珊瑚さんと再会して付き合い始めた。約半年付き合ううちに俺の家に泊まることも多くなり半同棲生活になっていたという。


 そんな生活の裏では、俺のストーカーである藍子さんが動いていた、と。俺たち二人を混沌させ、俺だけ連れて行った。


 珊瑚さんは1か月以上昏睡状態で目が覚めず、意識を取り戻した時には俺は行方不明だったらしい。警察に連絡してたが、彼女では捜索願は出せないらしい。そこで、俺の両親を思い出した。


 うちの実家は市内にあるので当然、実家にも行ったらしい。事前に電話連絡をして、いざ俺の実家に行くと俺の両親も意識不明だった。


 すぐに救急車に連絡したけど、現在も意識は戻らないとのこと。


 ここまで聞いた時点で、俺は実家に電話をしてみたが誰も出ない。父さん、母さんの携帯に連絡したが電源が入っていないという案内が流れるだけ。LINEは既読が付かない。


 そして、珊瑚さんの家では貴行が同様に意識不明。現在も入院中。貴行とは高校の時からよく遊んでいたし、珊瑚さんの弟ってこともあってよく三人であそびにも行っていたらしい。


 2021年時点の俺ならばイメージできる未来だった。そして、聞いている範囲で矛盾がない。しかも、ベンチの俺のすぐ横で話してくれる珊瑚さんは明らかに俺のことを心配してくれている表情だった。


 ただ、気になる。


 現在(2021年)の俺が、未来(2022年)の俺と意識が入れ替わったとき、つまり、タイムリープが成立したとき、俺は電球を交換していたらしいし、倒れて頭を打ったらしい。


 それまで藍子さんと暮らしていた、ということにならないだろうか。



「俺がタイムリープしてきたときより一瞬前までは、俺は藍子さんと生活していたんだと思う。ストーカーで彼女を目の前で傷つけた女の人と暮らしているってのが分からない」


「あんた まだそんなこと言ってんの!? タイムリープなんてないのよ! 隆志は誘拐されてからずっと昏睡状態だったんじゃないの⁉ だからこんなに痩せこけて!」



 珊瑚さんは手鏡を取り出し、俺の顔を俺に見せる。


 確かに、頬がこけている。やつれているというよりは、痩せこけている。


 俺がタイムリープした時、具合が悪くて動けなかったのは、長期間寝たきりだったから!? 確かに食事も取れなくて、マックでもジュースしか飲めなかった。



「お願い! 一緒に逃げよう! あの女 異常だよ! もう隆志を失いたくない! このまま行けるところまで車で逃げよう!」



 鬼気迫る表情で縋ってくる珊瑚さん。この怯え具合は普通じゃない。これまでよほど怖い思いをしてきたのだろう。腕と頭のケガも藍子さんに殴られたと言っていたし。


 俺は決断を迫られていた。藍子さんと珊瑚さん、二人は真逆のことを言っている。どちらのことを信じたらいいのか。


 タイムリープはあったのか、なかったのか……

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