禍福、縄をあざなう
男は眼鏡を掛けた
やれたデニムパンツに麻のシャツ。ひどく世間ずれしてはいないが、決してお
男は眠そうな目で私を舐めるように観察してから、私の腕を動かして具合を確かめ、足の裏の製造表記を確認し、とうの昔に機能しなくなった背中のサウンドスイッチを何度か押して「ふむっ」と鼻を鳴らした。
マニアか……。
私は複雑だった。
だがそんな願いとは裏腹に、男は私の購入を決断したようだった。
視界の端に長年連れ添ったメックキングが見えたが、彼はいつもと全く変わらぬ
もっとも彼からしたら自分は墓標なき墓地に残るのに私は新しい持ち主の元に旅立つわけで、彼の方こそ私に対して複雑さを抱えていたのかも知れない。
しかし安値で叩き売りされた私を待っていたのは、
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