第三章 新首都戦線
丸多事件
丸ノ内同時多発テロ事件。
今回の一連の騒動は、丸多事件という略称で、世間に知れ渡った。
秋葉原、御茶ノ水、神田、東京。
いずれの事件も証拠から、たった数名の恋愛解体員達によって解決された事が判明。
恋解本部は、警察の調べに対し、
「当時現場付近で任務を遂行していた複数の三級解体員が、事態の収拾に当たっていた。」
と回答。
当然、警察がそれで首を縦に振る訳もなく、言及は未だに続いているらしい。
以上の内容から分かる通り、恋九の活躍が日の目を見る事は無い。
何故か。
刃物持ちが一般市民に紛れ込んでいたとなれば、事態が悪化の一途を辿ってしまうからだ。
我々は世間に存在していてはならない。
そういう存在なのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――なんで同室やねん.....」
「全くだ。せめて男女位分けるべきだろう....」
灰と桜。
カーテン越し。
「シュウクダァイ!!! カァダァイ!!!!――」
「――うるせぇぞ厨二病ッ!!!!!!」
可美と雨音。
二者には、無断欠席のツケが回って来ていた。
そう、この若人達は、まだ高校生なのだ。
「懐かしいのぉ。宿題に課題かぁ......」
「お前が宿題? 冗談も大概にしろ。」
「じょ、冗談やて?!! これでも高校時代は学年三位の成せ――」
枯木は自身の耳を、両手で塞いだ。
次の瞬間、空いていた窓に、
その窓枠に、
人間がしゃがみ込んで来た。
「よう。新芽共ォ。」
ジョン・クリスタ。
「な、なんやお前ッ.....」
「十階だぞッ.....」
感情が読めないッ!!...... 刃物持ちかッ!!......
何やこの圧ッ.....
枯木は胸に手を当てた。
「構えんなァ。抜くぞォ.......」
男は刀の背を肩に乗せながらそう言った。
「もう抜いとるやんけッ......」
「これはただの刀だァ........ いやァ、ただの刀ではねぇなァ......」
そうして刀を返して眺めた。
高周波ブレードッ........
「いやなァ、大した用はねぇんだわァ...」
「ッ.........」
仮に用なんてあったら、
「域に言っとけェ――」
アタシらは、
「――次は東と南からだってなァ....」
為す術なく消されていただろう。
そうして、謎の恋愛解体師は姿を消した。
次の瞬間、カーテンが勢い良く開く。
胸に手を当てた可美と雨音が出てきた。
「――動くな!!」
「貴様の行動は全て...... ってアレ?.....」
静寂。
赤面。
「ぶッ.......」
「もう行ったぞ」
二者はゆっくりとカーテンを閉じた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
事務所。
解体員達は、
暇を持て余していた。
「隊長」
「何だ」
「嘉承と半田は何処行ったんですか?....」
ニヤリと笑う。
腹が立つ顔だ。
「気になるのか。」
「当たり前でしょう」
「あくまで同僚としてという建前は崩さんかぁ...」
ジジイが横目で何かを語ろうとするな。
エヴォ、睨む。
域、詮索断念。
「まぁいい....。アイツらは今、修行に勤しんでいるって所だ」
「修行?....」
一体何の...
「お前も会ったのだろう? ノウカ・スペンサーとミコチャ・スカーレットに。」
「化け物幼稚園児共の事か。」
こちらを横目に溜息をひと吐き。
続けた。
「お前なぁ、スカーレットはまだしも、スペンサーは百歳越えのご老体だぞ.....。少しは敬え....」
「?????」
百歳だ?.........
ダメだ..... このジジイの言うこと真に受けてたらキリがねぇ....
改めて続ける。
「後は、もう一つ......」
域がこちらを向いた。
察したのか?.......
妙に勘の良いジジイだな本当に.....
「........和泉守なら、本部が管理している病院で、呑気に御ねんね中だ。」
「何で分かった。」
「その顔は見慣れとるからな」
気色の悪い事言いやがる.......
てか......
「てか、アンタ怪我は?」
「あぁしたぞ。そりゃもう大怪我をな」
何でテメェここにいんだ。
「病院は?」
「行ったぞ」
結果を聞いてんだよ。さっさと答えやがれ。
と、言わんばかりの表情を見せてみる。
「酒の飲み過ぎだってよ。部下が無能なせいだな! ハ〜ハッハ〜!!!」
「一生言っとけ......」
何かうぜぇと思ったら酒飲んでんのかよ..........
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