恋愛解体
――異狂人。和泉守藤原兼重。奴はこうして成った。
頭の中にあの声が響いた。
和泉守の過去。
その全てを見た上で、俺は、何をすれば良い。
処刑されかけた和泉守は、その姿を愛呪へと変えた。
副隊になら殺されても良い。
そんな事、心の底から思っている訳が無い。
鏡音は構えた。
「刃猫ォ.......」
「兼重ッ.......」
ここは過去。
そして記憶。
ここで何をしようと、今が変わる訳じゃない。
なら、俺は、何をしよう。
何をすべきだ。
「副隊長!!!」
心共鳴で散々感じた気持ちは何だ。
あの刃人から発せられた感情。
「やめろ!!!!」
恐れ、憤り、悲しみ、絶望していた奴の感情。
「ソイツはやってねぇ!!!!」
そんな、奴の感情は、
鏡音を前にする度に、
昂っていたのだ。
落ち着きを払った、静か過ぎる、喜びを、
幸せそうな感情を、
放っていたのだ。
鏡音に声は届いていない。
「アンタが一番分かってんだろ!!!!!――」
副隊が突然、膝を着いた。
「――ウルサイニャアアアアアア!!!!――」
続いて兼重が膝を着く。
「――コノ刃猫ハ信ジヌワァァァアアア!!!!――」
「――信じてるに決まってるニャアアア!!!!!」
聞こえて...... いるのかッ.....
そんな思考も、口には出なかった。
ただ、一つ、ずっと、思っていた事が、伝えたかった事が、口から零れ落ちた。
「聞いてやれよッ....... 副隊長ッ......」
泣いていた。
その刃人は、泣いていた。
愛呪としてでは無く、刃人として。
和泉守は、空を噛み締めながら、
涙を流していた。
すると次の瞬間、二者が振り返った。
「ッ.......」
「何ニャッ.... お前ッ.....」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
東京駅。
愛呪。
涙粒ほどしか無かった光は、黒く醜く、大きい何かに替わっていた。
愛呪の突きを弾いた刀が、左手に握られている。
強く、引き寄せた。
――何が正しい恋愛解体か。
この真っ黒な気持ちは、大事なものなのかもしれない。
――そんな事、気にすんな。
けど、コレのせいで、二人が幸せになれないのだとしたら、
――思いのままに、ぶった斬れ。
ソレはきっと、要らないモノだ。
黒い刀身。
エヴォはそれを、
全力で振り抜いた。
そうして、
刃人は倒れた。
――......わかってると思うが、死んでないからな。
「あぁ.........」
間。
「ひとつ聞かせろ」
――何だ。
「.........アイツが持ってた刀が、纏刀か?........」
――.......
黙り込み。
――違う。
「...... そうか......。良かった。」
十九時十一分。
第九所属、非公認解体員、エヴォルオン・ハートによって、一級愛呪 - 和泉守藤原兼重が撃破された。
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