刃人

 丸ノ内。



「ドノ時代モソウダ。コノ地ノ人間ハ愛ニ飢エテイル....」



 愛呪大量発生。



「恋愛解体師ノ質モ、落チタモノダ....」



 雨音が正面から斬りつける。


 が、愛呪は指で受け止めた。



「西欧ノ解体師カ....」

「!?」



 愛呪は雨音の首元を掴んだ。



「和泉守藤原兼重ェ。冥土デ想イ、タント憂エ。」

「離セッ!!....」



 皮膚の表面に黒い陽炎が浮かび始めた。



「狂熱」

「ッ!!.....」



 黒炎が愛呪の周囲に渦巻き始める。



「散レ小娘――」

「――離サンカ我ェ」



 花咲桜、抜刀。


 匕首。



「何奴――」



 愛呪が構内に吹っ飛んだ。



 解放された雨音は刃物を胸に戻した。


 酷く咳き込んでいる。



「ッ...... 花咲さんッ..... 駄目ですッ.... 刃物を胸に戻してくださいッ......」

「オ前が抜いテ、俺ハ見物? 通らンヤろ..... ソれハァ.....」



 花咲さんの刃物は可返還式.......


 けど、代償は感情ッ.......


 酷使させるわけにはッ......



 花咲の目から血涙が零れ落ちる。



「花咲さんッ!!!! それ以上は――」

「――情ノ蹴リハ効クナァ.... 花咲ィ......」



 愛呪が構内から戻ってきた。


 傷は一つも負っていない。



「匕首ノ花咲ィ....」

「......」

「名乗レ。正式ニ処ソウ.....」



 匕首を握り締め、構える。



「簡単ニ死ヌなヨ糞愛呪....」

「言ワズモガナダァ、花咲ノセガレェ」

「チッ...........」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「次はぁ、東京、東京。お出口は――」

「――で、幼女は何処にいるんですかッ.....」



 山手線。


 アイヴとカミカイは同じ電車に乗っていた。



「それが分からんから、こうして追ってるんだろ....」

「お主らが追っとる幼女っつうのは、ミコチャ・スカーレットの事か?」



 チョコン。


 ノウカ・スペンサー。



「おいカミカイ。コイツは誰だ。」

「ソイツは恋愛解体師だッ....」



 このチビが......



「てかお前ら、何で満身創痍なんだ?........」



 心配人刃。



「病院行かなくて、大丈夫なんですか?......」

「歩けるからッ.... 大丈夫だッ....」

「それ大丈夫じゃないんじゃ.....」


 

 エヴォがノウカに目を向ける。



「で、僕ちゃんは何で此処にいるわけ?」



 おこ男児。



「誰が僕ちゃんじゃ!!! ワシは貴様より年上じゃ!!!」

「はっ。面白」

「貴様ぁぁあ!!!!」



 地団駄。



「東京〜 東京〜」

「おい、降りるぞ」



 エヴォがホームに足を着こうとした次の瞬間、逆側の扉が突き破られた。


 扉を突き破ってきた物体をアイリスが受け止める。


 アイリスが後ろに吹っ飛んだ。


 エヴォに激突。


 吹っ飛んだ。

 


「グハァッ......」



 ズサあぁ......



「何なんだよッ.....」



 アイリスが受け止めた物体を覗き込む。


 その物体には、見覚えがあった。



「花咲ぃぃいいいい!!!!」



 枯木、絶叫。



「しっかりしてください!!!! 花咲さん!!!」



 何だこの傷はッ......


 何でコイツ.....



 こんな状態で生きてんだッ........



「エヴ...................... でッ.............. 伝説ッ.......... テメェしかッ......... 殺れねぇッ.............」

「なッ........ 何の話だッ............」

「テメェの絶望をッ.......... 全力で燃やせッ...........」



 俺が消えてからの十年間で.......


 世間に何が広がったッ.................



「ノウカッ....... 何処に行く気だッ......」



 可美がノウカを引き留める。



「ヒヨっ子共は、大人しくしておれ。奴はワシらの問題じゃ.....」



 そうしてノウカは戸無き出口から去っていった。



「伝説ッ........... 嬢ちゃんをッ.............. 助けてやってくれッ..............」

「嬢ちゃん........... まさかッ.......」



 エヴォはノウカの後を追った。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「帰ッテ来ヌナ...。逝ッタカ?.....」



 和泉守藤原兼重。



「悪い子!!」



 幼女は和泉守の首元を切りつけた。



「貴様ニ用ハナイ。」



 和泉守は幼女を右手で薙ぎ払った。


 すると次の瞬間、正面から男児が現れた。


 虚空に一文字、飛と指先で描く。



「和泉守ッ......」

「ノウカァアアァ... 忌々シイ先見師風情ガァ....」

「飛ベ」



 和泉守は術を左手で受け流した。


 体が大きく左に逸れる。



 ノウカが唱える。



「万死――」



 が、和泉守が被せた。



「――新淵」



 口呪封じッ...........


 現れかけた黒い渦が消えた。



「マズイッ....」

「狂熱――」



 死に体男児。



「――嘉承、悪い。」

「!?」



 エヴォ、抜刀。


 愛呪の腕が飛んだ。



「ラビッツ・ハートッ......」

「.....」



 人違いだ。



 縮地、右袈裟。


 必中かと思われた。


 が、愛呪は刃物で受け止めた。



「老イタカ兎ィ... 年ハ罪ダナ....」

「........」



 LEVEL4ですら追えない一撃を見切った....



「サァ、血戦ノ再開ト行コウ....」

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