サムラ

「本当に世話が焼けるニャ...」

「全くだ」



 域、鏡音。


 二人は御茶ノ水に来ていた。



 迷子二名の発見を目的として。



「やった携帯はどうした」

「この感じ.... 多分電源切れてるニャ.......」



 舌打ち。



「ガキ共ォ.....」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ま、まずいですよ嘉承さんッ....」

「何がだ」

「任務中に......... ファミレスなんてッ...........」



 辛味の燻し鶏を頬張る。


 話は聞いていない。


















 食べ終わった様だ。


 店から出て、歩き始める。


 無論、聞かずとも、支払いは全額俺持ちだった。



「で.... 僕まだ任務内容聞いてないんですけど」



 嘉承はそさくさと歩みを進める。



「ご馳走様でした。」



 ブチッ....


 何かが切れた、音がした。



「任務内容を吐けッ....」

「うぉうぉうぉうぉう.....」



 半田は嘉承の背の布を掴み、揺さぶった。



 パチッパチッパチッ。



 ????



「あ、フォック壊れた...」

「!?!?」



 半田、酷く動揺。


 次の瞬間、何者かが背後から半田を斬りつける。



「――心の乱れェ....」

「.....何者だ」



 嘉承、薙刀で受ける。


 男は電磁伸縮スーツを身に纏っていた。



 コイツ、雑兵じゃない.......



「やはり解体ィ員かァ...... 」

「貴様、恋愛解体師だな?」

「ご名答ゥ。史上最強の恋愛解体師様だァ。」



 酔っ払い.....



 男が持っていた刃物に視線を下ろす。



 !?












 赤刀。













「貴様まさかッ!!!」

「久しいな。餓鬼ィ。」



 男は、空いた右手を胸に当てた。



 ジョン・クリスタッ!!........



「半田ァァァアアア!!!」

「ソイツから離れるニャアアア!!!!」



 隊長、副隊長。



 足が竦んだ。


 動けない。


 あの時の恐怖が、未だに私を苦しめる。



 異様に遅い速度で、男は掌を嘉承に突き出した。



「狂熱」

「嘉承さん!!! 失礼ッ!!!」



 半田、抜爪。


 辺りに高音が響く。


 半田は嘉承を抱き抱え、隊長の元に飛んだ。



 男の掌から蒼炎が放たれる。


 蒼炎が二名を掠めた。



 ガレオイが隊長の元に滑り込む。



「アオにゃん!!! ジンにゃん!!!!!! アオにゃんが!!!!!!」



 嘉承は腕に、


 半田は半身に大火傷を負っていた。



「水をッ........」

「水はやるな。やったら死ぬ」



 鏡音が慌てふためき始めた。



「はッ........ はッ........ ジンにゃん!!!!!!」

「半田ッ!!!!........」



 嘉承も地面に倒れ込んでしまった。




「今呼ぶから待ってろ.....」



 域は男の元に向かった。



「クリスタァ..... テメェ.........」

「死なねぇよォ。知ってんだろォ?」

「今回のテメェには殴る価値があんだよ!!!!!!」



 域は懐から筆を取り出した。



「やっとッ...... 殺ル気になったかァ...。三十年ッ.... 待ち侘びたぜェェ.....」



 次の瞬間、ジョンが域の目の前に現れた。


 虚空に不可の二文字を描く。



「.......」

「それは知ってる。」



 ジョン・クリスタ、攻撃方向を変更し対処。


 しかし、攻撃を当てた場所には、抗の字が描かれていた。



「やべッ.....」

「飛ベ。」



 ジョン・クリスタが吹っ飛んだ。



「流ニャン死んじゃ駄目ニャ!!!!!!!!」



 鏡音は延々と半田にそう呼びかけている。



「ッ!!.......」



 域は空を噛み締めた。



 アレをッ.....


 今度こそッ..... 守るべき命を守るためにッ......


 域は胸に手を当てた。



「じ、仁ニャン!!!! それは駄目ニャ!!!!!!」

「域!!!! 使うのかッ!!!! 使ってくれるのかッ!!!! 首都血戦ですら使うのを躊躇していたアレをッ!!!! 俺から奪い取ったアレをッ!!!!」

「アアアァァァアア!!!!!!!!!!」



 愛呪と同質の声が、周囲に響き渡る。





















 チョコン。


 域の目の前に、現れた、


 三頭身。



「随分老いたのぉ。域ぃ......」

「サムにゃんッ!?..................」



 男児は苦しむ域をじっと見つめた。


 そうして、動く。



「アアァァアアア!!!!!!」

「封。」



 男児が域の胸に小刀を刺す。


 すると域は、眠る様に倒れた。



 辺りに静寂が戻る。



「サムラァ...... 邪魔すんなやァ.......」



 半ギレ。



「ジョン・クリスタは似合わんぞ。誉ぇ...」



 ジョン・クリスタは、右手を胸に当てた。


 サムラは続ける。



「勧めんぞ」

「.....」



 躊躇。



「................ チッ...... クタバレ老耄ッ....」



 蒼い炎がジョンを包む。


 そうしてジョンは姿を消した。



「治ったかぁ? 細身のぉ.....」



 半田と嘉承の火傷は完全に癒えていた。



「何で逃がしたッ.... アンタなら戦えたんだろッ......」

「無理ゃ無理ゃ。彼奴は最強じゃからな。」

「じゃあ何で奴は逃げたッ.....」



 黙り込み男児。



「さァ... 何でじゃろなァ........」



 このガキッ...... 含みのある言い方しやがってッ....



「それより東京駅じゃ。早く行かんとマズイ ...」

「東京駅?..........」

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