第二章 恋愛解体事務所 第九

恋九

 恋愛解体事務所第九。


 俺と嘉承は、新設の部隊に配属された。


 それにしても、顔合わせが空き地とはどういう了見だ...



「死ぬ気でやるなら死ね。これが恋九の理念だ。」

「そうそう♪ よろしくニャ♪」



 隊長、一級先見師 - 域仁。

 現役時代にも噂はよく聞いていた。何せ、元恋一隊長様だ。だが、そんな隊長様も、今じゃ新入り担当。やはり歳には敵わんか...


 副隊長、死人人刃 - 鏡音ノネコ。人は、生ける刃物を人刃と呼び、主人を失った人刃を死人人刃なんて呼ぶ。

 奴は、そんな人刃の中でも特別な存在で、その姿は猫又。巷では刃猫なんで呼ばれてる。



「なんやあの白猫の嬢ちゃん...」

「アイツ、ヤバいよ。マジで...」

「そんなヤバいんか、あの嬢ちゃん...」



 花咲桜、自称花咲組組長。

 愛呪 - カオスでお馴染み、かの悪名高き花咲華恋の元舎弟。刃物持ちで型は匕首、つまりドス。


 枯木灰、元四課所属の警察官。

 幼い見た目に反して年齢が二十四だということ以外、何も分からなかった。



「で、何で学校サボってんの。生徒会長と副会長が。」

「アマネェル。学校など二の次だ」

「うっわ...」



 蒼瀬高校、生徒会長 - 可美京介。

 同じく蒼瀬、生徒会副会長 - 雨音歩。


 両者共に特記なし。



「鏡音さん....」

「ノネコ姐さんが副隊長♪」



 六級解体員 - 半田流。元恋四所属のエリート様。旧旧恋四隊長 - 天笠創一の死後、解体資格を本部へ返還。その後引退。その他詳細不明。


 アイリス・クリスタ。世間でもそこそこ名の通ったアイドル。その他詳細不明。



「ね、姐さん?...」

「先輩人刃だから、姐さん呼び何だとよ」

「その入れ替え慣れないわ...」



 アイリス・クリスタ特記、人格複数所有。



「癖がスゴい面子だニャ...」

「何。知れた顔だ。」



 知れた顔... 会った覚えは無いぞ....



「さて、では、役割決めがてら...」



 域が胸に手を当てる。


 全員が反応を示した。



「運動大好きニャ♪」



 域は胸から紙を引き抜いた。



「可美ッ....」

「あぁ、先見だッ...」



 域の動きに合わせてまず退いたのは、可美京介、雨音歩、エヴォルオン・ハート、嘉承葵の四名だった。



 餓鬼共... 先見師を知ってるとは...


 一体何者だ......



 先見師。


 その昔、占い師・巫女・神の使いと崇められた者は皆、未来について書かれた紙を胸から引き抜けたという。


 猫又が地面に手を着いた。


 何をッ...



「問題無し。やれ」

「おっけ〜♪ 白炎。」

「詠唱ッ!?」



 貴重な解体員に何する気だッ...


 動けなかった四名を、動けた四名が庇う。


 白き火炎流が、八名を呑んだ。


 が、全員無傷。



 嘉承葵、抜刀。


 花咲桜を守護。



「悪いッ、助かったッ...」

「刃物は抜くな、匕首の男」

「アンタッ... なんで知っとんねんッ...」



 可美京介、先見。


 枯木灰を抱きかかえ、回避。



「大丈夫かァい!? お嬢ちゃん!!」

「助かったッ... 厨二の坊主ッ...」

「厨ッ.....」



 雨音歩、


 アイリス・クリスタを突き飛ばし、回避。


 

「すまんッ....」

「ごめんねッ... ありがとう!」



 エヴォルオン・ハート、


 半田流の首元を掴み、移動回避。



「すまないッ...」

「元恋四でコレか....」

「何だと......」



 域が動く。


 域の頭上に白炎球が現れる。


 白炎球は猫又少女を生み出した。



「反射は知れたか。」

「オーケーニャ♪ 次♪」



 域は懐をまさぐり、何かを取り出した。



「何やアレッ... 臓器かッ...」

「「忘人臓ッ...」」



 またもや生徒会が反応。花咲は多分、何も分かってない。

 が、今回は俺も初見だ。


 なんだ、アレは。




「擬・忘熱」




 美しい弧を描く熱線。


 それらが域と鏡音を囲んだ。


 次の瞬間、熱線は一気に広がり、エヴォ達を切り裂きにかかった。



 その熱線には見覚えがあった。



 アレはッ... 熱線防壁ッ...


 エヴォが叫んだ。



「刃物持ちッ!!!!」

「「「「!?」」」」



 複数人が抜刀。熱線を受け止めた。



 雨音歩、抜剣。


 可美をカバー。



「腰抜かしたか? 会長。」

「アァマネェルッ... 知ってて言うのは卑怯だッ...」



 枯木灰、抜刀。


 花咲をカバー。

 


「すまん枯木ッ...」

「気にするなッ... お前に抜かす訳にはッ... いかないからなッ...」



 人刃 - アイリス・クリスタ。


 半田流をカバー。



「ありがとう、アイリス...」

「アイリス・クリスタ!! 半田の刃!! いざ参る!!!」

「毎回言うのか?... ソレ...」



 人格入替。



「私的には死ぬ程恥ずかしい。ので、正直慎んで欲しい。」



 嘉承葵、抜刀。


 エヴォをカバー。

 


「よく抜かなったなッ... エヴォッ...」

「すまないッ... 助かったッ...」

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