序章 - 北

神で神で祇

 私の同級生には、可美京介という男がいる。



「バッ。シュタッ...」



 うっせぇ...



「神で、神で、祇な可美がこの私!!!」



 厨二? 厨二に失礼だ。コイツのネジはぶっ飛んでんだ、多分な。



「アマネルよ。今日は何日だァ?」

「誰がアマネルだ。奇跡でも使って調べとけ」

「辛辣ゥ!!! だがそれで... イイワケナイッ!!!」



 うるさ過ぎる。


 蒼瀬高校、2年。生徒会長 - 可美京介。

 同じく2年、生徒会副会長を務めるのはこの私、雨音歩。

 歩... そう、女で歩だ。普通なら親に少し文句を言う所だが、私は案外気に入っている。


 よくある話だ。名前を決めたら女の子だった。


 そんな理由。



「アマアマアマアマ、アマ・ネルよ」

「早く仕事しろ」

「.........」



 会話に謎の間が生まれる。



 何かが分かった、分かってしまった。


 様子がおかしい。


 可美は出口へ、足を進める。



「ちょっと外に...」



 逃げる気だ。逃がすか。


 そうして肩を掴み、手前に引く。


 振り返り半回転。



「!?......」

「離せ、雨音」



 いつでも、何もかも、舐めてる。そんな男が、


 なんだその表情は。


 誰なんだ、お前。



「すまん。」

「ちょッ...」



 私を振り払って、奴は走り去って行った。


 気負ったヒーローみたいな顔して、どっかに行った。



「何なんだ...」



 二年だ。ずっと一緒にいた。


 私は、厨二病でアレな可美京介しか知らない。


 あれが、本物の可美京介なのかもしれない。



「知りたい...」



 私は何を言っている。


 奴を知りたいと?


 バカ言うな。やめてくれ。


 そうしてグチグチ。


 気付けば走り出していた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 屋上。


 可美京介。



「貴様ッ... 何しに来たッ...」

「つれないな。もう花咲姐さんとは呼んでくれないのか?」

「ッ....」



 花咲華恋。東の天災姫、LEVEL5 - カオス。



「ま、いいや。今日は忠告しに来ただけだから」

「何の話だ」

「LEVEL4 - オーブ。そのうち此処に現れるよ」



 何だと.... いや待て、



「熱線防壁が作動する。あれはブレイカーすら焼き切る代物――」

「――残念ながら、オーブには効かん。」



 何故だ。



「根拠は。」

「アタシが通れてる」

「それは貴様がLEVEL5だから――」

「――熱線防壁に獲物が引っかかると、警報が鳴る。」



 その通りだ.... 何故警報が鳴らない....



「アタシは知ってる。熱線防壁の全てを」

「ッ.....」

「アタシが作ったんだから。」



 何だと......



「可美!!!」

「雨音!?」



 雨音歩が、そこには立っていた。



「んじゃ、私はこれで。」

「待て!!!」



 東の天災姫は、虚空へと消えた。



「可美......」

「....」

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