鏡音ノネコ

「アイリス・クリスタ!! 半田の刃!! いざ参る!!!」

「ッ......」



 ブレイカーが後ろに吹っ飛んだ。


 言葉が出ねぇよ。


 推しが命の恩人で、俺の刃物?


 おまけに喋るわ戦うわ。


 ツッコミ所多すぎて、ツッコミ入れる気も起きない。



「アイリス... 半田の.... 刃....」


「アイリスも。私も。大事な一部。」

「だから!!! 同じ位に大切にしてあげてね!!!」


「二重人格........」



 ブレイカーは何かを探していた。



「ヌケガラ......」


「あれ!? 君は!!」

「私が前に殺したはずの...」



 前に..... まさかッ.....



「マサか、また会うとはね。」


「あれ!? 君話せたっけ!?」



 話だとッ!?



「アイリス!! そいつから離れろ!!!!」

「もう遅いわ」



 アイリスの首が宙を舞う。



――くびだけかのじょはにっこりわらった。



「ハハはハ!! 君、強いネ!!」

「貴様ッ... カオス種カ!!」

「半刃半呪。ソれガ私。わタシ達」



 アイリスの首が元に戻った。



「半田!! こっチ来テ!!」

「えっ...」



 足を引きずりながら、アイリスに歩み寄った。


 すると次の瞬間、アイリスの感情が読めた。


 少しの悪意に、多めの愛情。


 何に向けられているかは分からなかった。



「ワイヤレス接続完了!!」

「後は任せて。」



 次の瞬間、アイリスは俺の胸に両手を当てた。


 そして、引き抜く。



 俺が、刃物を持っていたなんて、誰が想像しただろうか。


 もっと早く知っていれば、隊長もッ........



 苦しいのか、悲しいのか。


 中途半端な感情の渦巻きを、肌身に酷く感じ始めた。


 そしてゆっくりと後ろへ倒れ込む。



「貴方の苦しみを半分貰う。だから、貴方の力を、半分貸して。」



 振り返り、愛呪を睨むアイリス。



「すぐ戻す!! ちょっとだけ貸してね!!」



 抜かれた刃物は、鉤爪だった。



 倒れ込む瞬間、ブレイカーの顔が見えた。


 元恋四副隊長、天笠香織。


 亡き隊長の妻が、隊長を殺した愛呪の正体だったのだ。



 つき、きりあげ、さげ、つき、つき、つき...


 さばく、よける、よける、さばく、さばく、さばく...


 天笠、自ら仕掛けず。



「前ヨり戦イごたエあルじゃない♪」

「余裕ネ貴方。」

「そウでモなイわ」

「ソウ。」



 天笠が仕掛ける。


 けりあげ、のうてんげり、まわしげり。


 さばく、うける、



 捌けないッ!!!....



 回し蹴りをみぞおちに貰う。



「決着ハ、油断ヲ許サナイ。」

「ッ........」

「アッ.... アイリスッ......」



 天笠は膝を着いたアイリスの髪を持ち上げた。



「何故、貴様が刃物ヲ持テテ... 私ガ刃物を持テナイノカ... 違イハ何ダ....」

「離セッ...」

「言ウ訳ナイ...ト。」



 天笠が蹴りを入れる体勢になった。



 動けよッ..... 体ッ...



 せめてッ... 俺をッ...



 どうしようもない程に役立たずな俺をッ...

 


 変わりに殺されてやる事すら、叶わない。



「アイリスッ..................」

「.....よく耐えたニャ少年。後は任せニャ」


 

 天笠の頭上に白炎球が現れた。


 白炎球が、猫又少女を生み出す。



 アイリスを左手で軽く弾いてからのネコパンチ。


 天笠、ギリギリで回避。


 風圧でめり込んだ地面は、肉球の形をとっていた。



「貴様ァ...」

「鏡音ノネコ!! ハートの刃!!! 参ニャれん!!」

「死人人刃ガァ... 」

「香ニャンッ......」



 天笠は地面に手を付き、蹴りの体勢に入った。


 そして蹴る。


 脚は奇妙な程に遅く動いていた。


 そして、次の瞬間、



「狂熱」

「ッ!?」



 脚から放たれた蒼い豪炎を、鏡音はもろに貰った。


 そして灰となって散り散りに。


 すると次の瞬間、灰から数歩の所に、白炎球が突如として現れた。


 白炎球が、猫又少女を生み出す。



「どウしテッ... 異狂人ニャンかニッ...」

「白炎持ちのアンタには、言われたくねェな」



 天笠は悲しげにそう言った。


 蒼い炎が天笠を包む。


 そして天笠は姿を消した。


 猫又が膝を着く。



「新芽が摘まれなかっただけ、良かったと思う事にするニャ...」



 アイリスと半田は気を失っていた。

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