序章 - 西
花咲兄さん
殺。花咲桜。
「柔いのぉ...」
「アイアイアイアイァァァ...」
どいつもこいつも見境無く襲いおって... 花咲組が仕切っとるシマん中で好き勝手はさせんで...
呆。枯木灰。
「おい半グレ。アタシの獲物をとるんじゃねぇよ。」
愛呪の大量出現と同時に、突然この地に現れた女児がおった。
それがコイツ。
「嬢ちゃん... 半グレちゃうねん、前も言うたがな――」
「――元4課。これでも昔は貴様らの様な害虫共の駆除を担当していた。だから、誤魔化しても無駄だ」
この嬢ちゃん... マル暴やったんか。可愛げある見た目からは想像つかんな...
「何見てやがる変態ジジイ」
「じッ... ジジイやて!? これでもまだ20代前半じゃ!!!」
「語尾がジジくせぇんだよ虚言ヤクザ」
口の悪いガキやのぉ...
まぁええわ。
次の奴が出てきとうようやしな。
「用が出来た。またな、クソガキ」
「がッ、ガキだァ!? アタシは24だ!!!!! ガキ扱いすんじゃねェ!!!!」
そう言う灰を背に、桜は去っていった。
背の高いビルを飛び越えて。
「あの野郎ッ........」
結局、見た目だけじゃ何も分からへん。
声も性格も歳も、その胸に宿す信念すらも。
ビルの屋上にいたソレは、人を喰らっていた。
「ホシイノホシイ、アレガホシイ」
「テメェが何で化けたか、 教えてもらおうか...」
「アレモホシイ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アイツはいつも、私より先に愛呪を見つける。
恋解本部から直接報告を受ける私よりも早く。
ぷるるるるるる。
「枯木さん、マズいです...」
「なんだ。端的に伝えろ」
「LEVEL3、イドサイコ種がその地域に出現しましたッ... 型はアジア、とにかくそこから離れて下さいッ...」
――用が出来た。またな、クソガキ。
あの野郎... まさか..........
「枯木さん?... 枯木さん!? クソッ!!!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぱんち、はらきっく、かべにどかん。
「ぐハァ!!!」
なんやコイツッ... 何なんやこの力ッ...
「ホスィ?アアアアア?」
「要らんわボケェ!!!!」
ぱんち、ぱんち、がーど、ぱんち、がーど、がーど、きっく、ぱんち。
花咲、渾身の蹴りが愛呪のミゾオチに刺さる。
「まんま貫いたるわぁあああ!!!!」
「エエアアアァァァアアアア!?!?!?!!!............」
夕方に静寂が戻る。子供の帰りを促す鐘が辺りに鳴り響いた。
謎の愛呪は地に伏している。
すると次の瞬間、声を発した。
「......アレハオマエノカ?」
ふと後ろ見ると、そこには居た、アイツが。
「はぁ... はぁ... おい... 虚言ヤクザ... それは.... アタシんのだ....」
「お前ッ... 何で来たんやッ....」
すると次の瞬間、愛呪は少女に飛びかかって行った。
「オマエノナンダナ!? ホシイ!!!!」
「避けろ嬢ちゃん!!!」
「LEVEL3は...」
あいじゅたいりょうしゅっけつ。
何がッ....
「一人で殺れる...」
次の瞬間、切り裂かれた愛呪が立ち上がった。
夕日に照らされたソレを、美しいと思ってしまった。
「ヤッぱり、いらない....」
「なんで死んでないのッ...」
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