第9話 主犯の行方
ソフィアに働け宣告をされたエマは徹夜で仕事に挑んでいた。
「ふあぁぁぁぁ」
「ねぇ、ねぇ、なんか宝石買った人が次々に倒れたらしいよね? 私大丈夫だったんだけど、運が良かったのかな!?」
ニーナがラッキーとばかりに言う。
あれは、私達に発覚を遅らせるために男達に絡ませて時間を稼ぎ、本物の宝石に入れ替えたんだと思う。
だから、その宝石は本物なんだよ? よかったね。ニーナ。
「私も買ったけど、何ともなかったよ? 不思議だよねぇ! 本物の宝石をあんなに安くゲットできてラッキーだよね!」
「ホントホント! 私達すごい!」
「そうねぇ!……ふあぁぁぁ」
大きな欠伸をしていると、不思議そうに見て質問してきた。
「今日、エマ眠そうだね? 大丈夫?」
「あぁ。ちょっと街が騒がしかったからかなぁ。眠れなかったんだよねぇ」
それを聞いたルークが立ち上がって近づいてきた。
「エマ、大丈夫なのか?」
「(ボソッ)もしかして、昨夜の騒動に駆り出されたのですか?」
「(ボソッ)そうよ。さっき終わったのよ」
「んー。たぶんだい────」
「少し仮眠室で仮眠を取ってこい」
「えっ!?」
「眠くては仕事にならんだろう」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「えぇ? ルークさんが優しいなんて……」
ニーナが何か言っているが仮眠室に向かう。
ルークに気を使わせちゃったわね。
なんか変に二人が仲良くなったみたいな感じになんなきゃいいんだけど……。
ま、いいか。今は寝よう。
ベッドに横になるとすぐに寝息を立てた。
コンッコンッ
ノックの音がする。
少し目を開けるとニーナが顔を覗かせていた。
「大丈夫? お昼だから一緒に食べない? 食べたら仕事に出るようにってルークさんが」
「あぁーーー。ありがとー」
「ふふっ。寝起きのエマもボーッとしてんのね。普段もボーッとしてんのに」
「もぉー。それは言わないでよー」
「まぁ、お昼適当に買ってきたんだ! 食べない?」
「うん。ありがとー」
サンドイッチをパクッと食べてお茶で流し込む。
「なんか、昨日の騒動さ、犯人まだ捕まってないんだよね?」
「うん。そうだと思うよ?」
「恐いわねぇ。何処に潜んでるのかしら? あの宝石売ってたおじさんが犯人よね!」
「んー。表向きはね。でもあんなに顔が知られたらこの国ではもう歩けないわ。捨て駒に等しくなっちゃう」
あれ?
探索して反応しないのは隠れてるからだと思ったけど、もしかして……。
決めつけるのは早いわよね。
「そうよねぇ。あっ! もうお昼時間終わっちゃう! 行こう!」
「うん!」
念の為洗面所で髪や服装の乱れを整える。
部屋に入り、ルークに礼を言う。
「仮眠ありがとうございました! すみませんでした!」
「これからも体調が悪い時は休んだ方がいい。その方が効率がいいからな」
「はい! ありがとうございまーす!」
受付に戻る。
「あっ! エマちゃん体調悪いんだって? 大丈夫?」
声を掛けてきたのはシオンだ、
「うん! ご心配お掛けしましたぁ! もう元気でーす!」
「エマちゃんの元気な顔が見れてよかった!」
適当にはぐらかす。
手を振って見送る。
去った後に別の兵士団の人がやってきた。
「昨日の宝石テロに関して進展があったようです! 伝令です!」
「はぁい。ありがとね」
「失礼します!」
礼儀正しい子ねぇ。
たまに来るけど、なんて言う名前なのかしら?
ま、後で聞いてみましょ。
「エマ、持ってきてくれ」
伝令をルークのところに持っていく。
「伝令です! お願いしまーす!」
「ふむ」
ルークが受け取ると伝令の封筒の中を確認する。
「なんだと!? 何故そうなる!? 黒幕が別にいることは、分かるじゃないか!」
ハッとして取り繕うルーク。
アイコンタクトをすると。
「今回の件宝石を売っていた奴が死体で発見された。そいつが売っていた証言が複数あり主犯だと思われる為、今回は犯人死亡で片付けるそうだ」
そんな話は私の所に来てない。
兵士団が独断でそう判断した?
内部にも糸を引いているものがいるわね。
「そうなんですね。それで、何故怒るんです?」
「こんなの使い捨てで口封じに殺されたに決まっている! 黒幕が別にいる事など、明白ではないか! どういう判断だ!」
こちらをジィっと見ている。
「(ボソッ)私の所にその話はきてないわ」
「(ボソッ)って事は中間職ですね」
「私には上の考えてることなんてわかりませーん!」
そういうと席に戻る。
しかし、内部に何人か害虫がいるわね。
どうにか始末したいところねぇ。
午後はそれ以降変わったことも無く終わったのであった。
「お疲れ様でしたー!」
「今日は帰ってしっかり休めよ」
「はぁーい!」
ルークに小言を言われながらもいつもの店に行く。
「あっ、マスター! 昨日大丈夫でした!?」
「あぁ。すまなかった。助かった」
「いえいえ! 今日はぁ、パフェとワインとー、ハンバーガー食べたいなぁ」
「あいよ。今日はお代いらないよ」
「えぇー? いいのぉ?」
「お礼だ」
「じゃあ、お言葉に甘えますー」
お礼言ってできるのを待っていると、来客がやってきた。
「まったく……帰って休んでるかと思えばこんな所に居たんですか?」
見ればルークである。
「何でここが分かったの?」
「たまたま入るのを見かけたんですよ。こんな隠れ家的なところでいつも食事してるんですか?」
ここは大通りの裏の裏っていうくらい奥まったところにあるお店なのだ。
だから、知ってる常連しかほぼ来ないのだ。
「だって、マスターがなんでも作ってくれるんだもーん」
マスターの耳が少し赤い。
ふふっ。照れてる照れてる。
「あいよ」
パフェとワインを出してくれた。
「はむっ! うーーん! 染み渡るぅー! おいひぃー!」
頬に手を当てて目をトローンとさせる。
「パフェですか?」
「うん! 甘いもの好きだから。それにこれ!」
ワインをグビッと飲んで。
「あぁーーー! これが美味しいのよねぇ!」
「パフェにワインって合うんですか? すみません。自分はエール下さい。あと、できればガッツリの物を……」
「私ハンバーガー頼んだからもう一個作って貰ったら?」
マスターが作りやすいように提案すると。
「あっ、それでいいです!」
「あいよ」
黙々と作り出す。
「それで、どう思います? 今日の伝令」
「んー。私まで話来てないからその下で勝手に解決させちゃったんだと思うわ」
「って事は大将が?」
「それは無いわ。あの子は私を裏切らない」
「そこまで信用が?」
「えぇ。あの子も私もお互い信用し合っているから。それはないわ。ま、色々あるのよ」
「そうですか。となるとそこから下って事ですね。多いですよ?」
「だから困ってるんじゃなーい。まぁ、一回兵士団側とも話しないとなんとも言えないわね」
ハンバーガーが出てきた。
佐世保バーガーのように上からピックが刺さっていて、トマトとレタス、厚いハンバーグにチーズが乗っているんだが、ハンバーガーが二段なのだ。
「わぁー! ボリューミー! さっすがマスター!」
「おぉ。凄い。美味しそうですね」
「マスターが作るのは全部美味しいのよ!」
さすがに縦に一気には食べれず、上半分下半分とチビチビ食べる。
「お肉がジューシー! ずっごい美味しいわ! あー! 幸せ!」
横目で見るとルークはバンズを潰して縦に一口で頬張る。
「んー! これは美味しいですね! 自分も今度からここに来ようかな。マスター、いいですか?」
「お嬢の知り合いだ。いつでも来い」
「やった! ありがとうございます!」
「あーあぁー。一人でゆっくり出来る場所だったのにぃー」
頬を膨らませて言うと。
「いいじゃないですか! ここを独り占めするなんて狡いですよ!」
はぁ。と溜息をつきながらハンバーガーを食べていると。
「あーー! 二人してデートですか? お邪魔でした?」
「ちがーう! また増えた!」
やってきたのはソフィア。
「えぇー! それ美味しそうじゃないですか! マスター! 私はエールとこれ同じの下さい!」
「あいよ」
せっせと再び作り出す。
作っていると親しげにルークがソフィアに話しかけた。
「自分と一緒ですね」
「うっさい! 一緒にすんな下僕が!」
「扱い酷いですよ!?」
この店はこの日を境により一層、夜が騒がしくなったのであった。
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