第6話 反省会
「お疲れ様でしたぁー!」
「お疲れー」
エマは挨拶をすると直ぐにいつもの店に行くことにした。
今日は既に襲撃を撃退していて緊急の用事はない。今日くらいは元帥の仕事はお休みだ。
「マスタ────」
「待ってましたよ!?」
仁王立して立っていたのはソフィアだった。
「えっ!? なんで……」
「今日のことを反省しないとダメだと思い来ました」
「えぇー。もういいじゃん。マスター、パフェとワインちょうだい。それとサンドイッチ食べたい!」
「ちょっと! 話しながら食べますからね!? マスター。私もサンドイッチ下さい! あと、エール!」
「あいよ」
二人で並んで座ると今日のことについて話し始める。
「まず、なんで今日詰所でローブ被ったんですか?」
「それは、魔法師団の下っ端の子が助けを求めてきたのよ。敵襲を受けてて相手が手練だって言って」
「なるほど。それで、どうしたんですか?」
「最初は受付嬢として普通にルークに敵襲ですよって伝えた」
「そこまではいいですね。そこからは?」
「詰所に来てた子達で対処しようとしてたけど、無理じゃん? だから、私が行った」
「なぜ無理と?」
「あんな若い子無理でしょ。ちょっと面倒な相手だったよ?」
「でも、あそこにいた班は今1番伸びのある若手たちだったんですよ。手練でもあの人数いればどうにかなりました」
「……でも、全滅する可能性もあ────」
「だとしても、それも経験です。全部エマさんが肩代わりするおつもりですか?」
「そういう訳では……」
そっと出されたパフェをひと口食べる。
「おいひぃ」
ワインもひと口。
「はぁ。そうよね。全部私一人で見るなんて無理があるよね」
「そうですよ。少し部下達を頼ることを覚えてください。それと、経験の乏しい奴は使い物になりません。臨機応変に対応できないからです」
「はぃ。ごめんなさい」
「分かればよろしい」
エールをゴクゴクッと喉に流す。
「まぁ、でもエマさんが駆け付けてくれて被害は最小限。犠牲者は出なかったです」
「ならよかった」
「エマさん、正体を隠して生活いていることの意味を今一度頭に置いて下さい。あなたが死んだら、誰がこの国を守るのですか?」
「……そうね」
パフェをパクパク食べて、サンドイッチもハムッと食べる。
サンドイッチはチーズとレタスとトマトだ。
「さっぱりしてて美味しい! さすがマスター!」
また耳を赤くしているが今日はいつもと違った。
「無理すんなよ?」
久しぶりに話してるの聞いた。
「ふふふっ。ありがと。心配してくれてるのね?」
また黙って片付けをしている。
「それじゃあ、子供達は無事に集まったわね?」
「はい。今日から各所の院長も一緒に子供たちと同じ宿泊施設に泊まっています」
「明日非番だから様子見に行くわ」
「じゃあ、私も行きます。受付嬢のエマさんとして来てくださいよ?」
「分かってるわよ!」
反省会の後は雑談に花を咲かせ、何時もよりは早く帰宅するのであった。
◆◇◆
次の日
待ち合わせ場所に着くとソフィアは軍服であった。
私は黒いニットにグレーのロングスカートで来たんだけど、視線がすごいんだよねぇ。
そんなに私が可愛いのかな?
「あっ、エマさん……また今日は攻めてますねぇ。すごいボンッてしてますね! コノヤロー!」
「そうかなぁ。なんか落ち着いてた方がいいかなと思ってぇ。テヘッ///」
「あぁ? イラッときましたよ? そのキャラホントに腹立つんですよねぇ!」
「まぁ、まぁ、落ち着いてよぉ。ソフィアちゃん?」
「ぐぬぬぬぬぬ」
拳を握りプルプルさせながら我慢している。
これくらいの挑発で感情を露わにするぐらいじゃまだまだね。
「もう! 行きますよ!」
先頭に立って歩いていってくれる。
後を着いていくと元教会の孤児院が見えた。
「わーーー! 逃げろーーー!」
追いかけっこをしているようで楽しそうな声が聞こえる。
子供達が走り回っている。
大人を見つけてソフィアが声をかける。
「すみません。ここの孤児院の院長ですか?」
「前の村ではそうだったが、今のここの院長は違う。院長ならあっちにいるよ!」
昨日のうちにこの孤児院の院長を決めたことに驚いた。
「院長を決めたんですか?」
ソフィアが聞いてみると。
「そうだ。誰が仕切るか決めといた方がいいという話になってねぇ」
「なるほど。では、あっちに行ってみます」
聞いた方に歩いていくとそこには白い髭を生やしたおじいさんが居た。
「あのー。ここの新しい院長さんですか?」
「おぉ。そうじゃよ? これはこれは、軍の方か。この度はいいお考えを持ってくれたもんじゃ。ありがとうございます」
深々と礼をされる。
「あ、いえ。いい考えでしたか?」
「はい! 各々の村や街で孤児院を運営するのは補助があってもなかなか厳しいものだったんじゃよ。食費で消えてしまって衣服の分の金がなくなったりしてたのじゃ」
「そうだったんですね。その現状を知らず。ご苦労お掛けして、申し訳ありませんでした」
「いいんじゃよ。そんなに国にばかり頼っていては孤児院として情けないからのぉ。だから、色んな子供がいる人にお下がりを貰ったりしてな。何とかしとったんじゃ」
「そうだったんですね。そのことは上層部に伝えておきます。ここはどうですか? まだ一晩しか経ってないですけど」
「ここは部屋があるし、広い。更に教会は広いホールのようなものじゃから子供達が遊び回れる。いいことずくめじゃ」
ホッホッホッと嬉しそうに笑っているのを見てこっちも嬉しくなってしまう。
よかった。私の判断は間違ってはいなかったんだな。
「それなら、良かったです。何かあったら詰所の方に言ってくだされば、このエマがおりますので」
そう言いこちらを手で示す。
「エマです! 魔法師団で受付嬢として働いていまーす! 何かありましたらお申し付けください!」
「こりゃ、べっぴんさんじゃ! 毎日行きたいもんじゃな! ハァッハッハッハッ!」
「はい! 何時でも遊びに来てくださいね!」
胸の前で手を合わせて笑顔で話す。
ソフィアからの冷たい視線が刺さる。
「では、何かありましたら────」
「そういえば」
院長が何かを思い出したようにソフィアに声をかけた。
「軍の方をお招きして感謝の宴をしたいと思っておりましてな。ま、宴と言ってもいつも私達が食べている料理をお出しして子供達と交流してもらいたいんじゃが、どうじゃろうか?」
「それは、いいですね。私達もいい勉強になるでしょう。是非お願いします」
「では、早速じゃが1週間後はどうじゃろう? その頃には子供達も慣れてくる頃だと思うのじゃが」
「はい! それだとこちらも調整できますので。こちらも上のものを連れてきます。十名程になるかと思います。こちらに配属してる兵士達も参加させるようにしますので」
「わかりました。それでは、よろしく頼むのじゃ」
「はい。では」
手を振って見送ってくれた。
子供達が遊んでいるところを通り過ぎようとすると、1人の子供がこちらを指さして大声で叫んだ。
「あーーーーっ! あそこにデカパイお化けがいるぅー!」
「ホントだぁ! 逃げろーーー!」
男の子三人が逃げていく。
元気だなぁと達観していると。
「こっちはペッタンコマンだーー!」
前の方でブチッという音が聞こえた。
「だぁぁれがペッタンコだごらぁぁぁ! 少しはあるわぁぁぁ!」
追いかけようとするソフィアを力ずくで羽交い締めにする。
「うわぁぁ! ペッタンコマンに襲われるー!」
「逃げろーーー!」
「にげんなごらぁぁぁ!」
「まぁ、まぁ、子供が言ったことだから気にしない気にしない!」
何とか引きづって孤児院を後にしたのであった。
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