第4話 孤児院設立計画
悪徳院長を兵士団に押し付けてきたエマはいつものバーに来ていた。
「マスター、いつものパフェとワイン! お腹すいたからパスタ作って!」
「あいよ」
マスターが作り出した後にエマも仕事をする。
念話を繋ぐ。
ザザッ
『ソフィア急用よ』
『了解です! いつもの店ですか?』
『そう』
『すぐ行きます』
プツッ
「お待ち」
パフェとワイン。それと、濃厚ミートソースパスタであった。
「ありがと。流石マスター。私が食べたいのわかってるぅ!」
マスターの少し耳が赤い。
照れてるなぁ?
「何ニヤニヤしてんですか?」
「あら、ソフィア。早かったわね」
「急用だって言うからじゃないですかぁ。マスター、エールください」
「あいよ」
ソフィアが真剣な顔で向き直ってくる。
「それで急用って?」
「うん。ここから東に位置する村で人身売買が行われていたの」
「えっ!? 相手は!?」
「ゼルフ帝国よ」
「あそこの皇帝か……」
「そう。皇帝が買取っていたそうよ。けど、それだけじゃなくて孤児院の院長が補助金を着服していたわ」
「それ本当ですか!? 許せない!」
「そこで、孤児院だけど私所有でデッカイの作れない?」
「そりゃ、資金は豊富ですけど……」
「えっ? ダメ?」
ソフィアが腕を組んでうーんと唸っている。
「それって、誰が子供達見るんですか?」
少し考える。
子供を見る人かぁ。
軍人じゃなぁ。
でも、今回のことがあったのを考えると見張りも必要かな?
「あっ! いいこと考えた! 国中にある村の孤児院を一つにして、全部の院長を集めたらどう? で、兵士団と魔法師団から少しづつ警備につける!」
「それなら、国の事業として出来ますね。元帥の名のもとにやりますか!」
「うん! 私は売られた子供達助けに行きたいけどなぁ」
「でも、それは……」
怪訝な顔で難色を示すソフィア。
「うん。行くとなるとまた戦争に陥る可能性が出てくるわ」
「子供達には悪いですけど、ここは我慢するしかないですよ……」
「くっ! こんなに力と地位がありながら子供一人も助けられないなんて、私がいる意味ある!?」
ダンッとカウンターを叩く。
「落ち着いてください! エマさんが悪い訳じゃないですよ……悪いのはゼルフ帝国です」
「くっ!……まずは早急に孤児院を設立するわよ。あいつらを潰すのはその後ね。孤児院の場所が問題ね……どっか使ってない施設ないの?」
「えぇーっと…………街の教会ですかね? 誰も祈ってないですし人もいません」
「丁度いいじゃない。住み込み用の住居もあったわよね?」
「はい! じゃあ、そこにしましょう!」
マスターからエールを貰うとグビッグビッと飲み干す。
「ぷはーっ! じゃあ、早速明日から動きます」
「よろしく!」
ソフィアが去った後。
そもそもなんでこの国の中にゼルフ帝国の奴らが入ってこれるのよ?
城壁で隔離してるはずなのに……。
だれか手引きしてる?
内部にスパイか……有り得るわね。
それを洗い出さない限り侵入をさせないようにするのは無理かもしれないわね。
「マスター、ご馳走様」
その日の仕事を終えたのはまた夜中であった。
◇◆◇
「おはよーございまーす!」
「あっ! おはよー!」
ニーナが挨拶を返す。
上司のルークは怪訝な顔をしている。
「ルークさん? どうかしました? 今日は私遅刻してませんよ?」
「そんなのわかってる。今朝から伝令が騒がしいんだ。上が何かで動いているらしい」
さっそくソフィアが動いてるのね。
流石、仕事が早いわ。
私も仕事しなくちゃ。
「では、持ち場に着きまーす!」
「おう。頼む」
珍しく頼まれてしまった。
受付に座ると。
「あっ! エマちゃんご出勤だね! (ボソッ)さっきまでルークさん座ってたからエマちゃん待ってたんだよ!」
そう言ってきたのは前にご飯に誘ってきたシオンだ。
後ろから強い死線を感じる。
なんか念じられてる気がするけど気にしないようにしましょう。
「はい! ありがとうございます! 兵士団からの伝令ですね?」
「そうです! ここの方にも関わることなので伝えろと言われております! ここ辺境街に大規模な孤児院を作るとのことです! 国中の村から子供達を移送してくるそうで、別の国の介入がある可能性もあるそうです!」
後ろからぬっと出てきた上司。
「それは、戦闘になるかもしれないということか?」
「そうなります!」
「兵士団の援護は?」
「数名ここにも配属予定です!」
「今日か?」
「はい! もう既に兵士団で護送をしています!」
「そうか。わかった」
「失礼します!」
シオンが去った後に、ルークは舌打ちしていた。
「チッ! なんで他国が介入する可能性があることをこんなに急にするんだ!」
それは、違うと思うんだなぁ。
何故かと言うと、裏切り者がいる可能性があるから……だよ?
「んー。上の方も何かお考えがあるんじゃないですかねぇ?」
「ったく! いつもいつも勝手だ!」
ダンッと机を叩いて怒りを露わにする。
怒っちゃって、怖い怖い。
関わらないでおこう。
外は兵士が慌ただしく動いている。
この詰所に配属されたであろう兵士団の兵士がゾロゾロと五人やってきた。
一つの班が来たようだ。
ビッと敬礼をして挨拶してくる。
「これより! 辺境街魔法師団詰所班現場に着任します!」
「はぁーい! 頼りにしてますよ?」
一同は顔を赤くし一点に視線が集中している。
ふふふっ。
可愛い反応ね。
私もまだまだいけるわね。
「あらぁ? 兵士団の皆さんお疲れ様ぁ! お茶でもどう?」
「頂きます!」
ニーナがわざわざカウンターから身を乗り出してお茶出しをしている。
これみよがしに谷間を見せて。
男共はそこしか見ていない。
「ご馳走様でした!」
最早、私の事など見ていなかった。
はいはい。
どうせ胸だけのチビですよ。
「ご馳走様でした! あの! お姉さんのお名前聞いてもいいですか?」
ニーナが身を乗り出してきた。
一番可愛い顔だからだろう。
ま、私は可愛い系より渋めな方が好きだからいいけど。
「あら? 私? わた────」
「あっ、いえ、こちらの小柄の方……」
「なっ!」
顔を赤くして奥にドスドスと引っ込んでいく。
ざまぁないわね。
「私? 私はエマよ」
「エマさん! 僕が絶対守ります!」
「ふふふっ。ありがとう。頼りにしてるわね?」
「はい!」
まぁ、可愛いこと。
若い子に言い寄られるのも悪くないわね。
名前を聞いて満足したのか皆の元へ戻り詰所の中へと入っていく。
「可愛い子たちだったわね?」
話をニーナに振ってそちらを向くとこれはもう不機嫌な顔をしていた。
「ふんっ! そうね! これで勝ったと思わないでよね! まだあの子達はここにいるんだから!」
「えぇー? なんの事かわかんなぁーい」
「ぐぬぬぬぬ」
わぁ凄い顔。
こんなのあの子達には見せられないわね。
でも、ソフィアが動いてる以上、今日中には方が付くはず。
おそらく護送手段は村からある程度歩いたらここの近くまでは転移魔法で来るように指示してるはず。
魔力量によって飛べる距離と人数が決まるからそれぞれ複数人で護送には当ってるはず。
なにか起きるとすればこの街の近く。
しばらく考え事をしながら外を眺めていると、慌ただしく魔法師団員が走ってきた。
「どうしたの!? そんなに慌てて!?」
「大変です! ここから東に五百メートル行ったところで敵襲です! 敵が強く、太刀打ちできません! 応援お願いします!」
「わかったわ。貴方は休んで!」
振り返りルークに伝える。
「緊急事態です! 東で敵襲!」
すぐにルークが受付の部屋を出ていく。
「兵士団諸君敵襲だ! ここから東に五百メートル!」
「「「はっ!」」」
兵士団が駆けていく。
それを横目にどさくさに紛れて建物裏へ行く。
相当な手練みたいね。
護衛についてる兵士でやられるならあの子達が行っても一緒よ。
真っ黒なローブを被り認識阻害魔法を施し索敵する。
「サーチ」
人が入り乱れている所がある。
うん。ここね。
「転移」
転移した後、ルークが顔を覗かせていた。
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