第三十七話 アリサ・ライゼス③

「ちょっとあんた! お姉にいったい何してるのよ!!」


 言って、「ガルルッ」と唸ってくるアリサ。

 オズはそんな彼女へと言う。


「誤解だって!! たしかに毎回ミーシャのことを殴ってるけど、ちゃんとした理由があって殴ってるんだよ!!」


「お姉を毎回殴るってどんな理由よ……ま、まさか! あんた! お姉を調教したり洗脳したりする気なんでしょ!!」


「いや、してないからそんなこと!!」


「じゃあどうして、お姉のことを殴るのよ!?」


「仕方なくだよ、仕方なく!」


「あたし知ってるんだから!! 暴力男はいつもそう言うって、マンガとかでよく読むんだからね!」


 ズビシっと、オズの方を指差してくるアリサ。

 終わった、完全に誤解された。


 さて、どうしたものか。

 と、オズがそんなことを考えている。


「えへへ……よかったです!」


 と、聞こえてくるミーシャの声。

 見れば彼女は口元に手をやり、楽しそうな様子でクスクス笑っている。

 そんなミーシャはオズとアリサを交互を見たのち、誰にともなく呟く。


「アリサとオズさんがこんなに仲良くなって、わたし……本当に嬉しいです」


 オズはそれを聞いて思う。

 たしかに話せてはいる。


(だけどこれ、仲良くなったって言うのか……)


 考えたのち、オズはアリサの方を見る。

 すると。


「な、なによ! っ……まさかあんた、あたしも殴りたいんじゃないでしょうね!?」


 と、自らの体を抱きしめ怯えた様子を見せるアリサ。

 オズはそんな彼女へと再び言うのだった。


「だから好きで殴ってるんじゃないからな!?」

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