第二十八話 腹パンVSビギナー狩り②

(さぁ、頼むから引き下がってくれ)


 と、オズがそんなことを考えていた。

 まさにその時。


「ん、待てよ……こいつオズじゃねぇか? あのイケスカねぇ勇者と一緒に、ダンジョン攻略してた野郎だ!」


 と、そんなことを言うビギナー狩りの一人。

 そいつは他の二人へとさらに言葉を続ける。


「ほら! 冒険者ギルドで話題になってるやつだよ! 覚えてねぇのか? 昨日、冒険者ギルドの受付で揉めてただろうが!!」


「オズ、オズ……無能のオズか!」


「ケヒヒヒヒ、シッテルシッテル」


 と、最初の一人に対し反応する残り二人。

 何だか猛烈に嫌な予感がする。

 ビギナー狩りの一人は、オズを指差しながらオズへと言ってくる。


「自滅したな。ベテランの中のベテランであるてめぇが、ここにいるのが証拠だ! 能無しの雑魚になったから、こんなところにいるんだろぉが!!」


「どうだろうな? そもそも俺がオズかどうか——」


「オズ様を馬鹿にしないでください!!」


 と、ビギナー狩りとオズの会話。それを断ち切るように聞こえてくるのは、ミーシャの声だ。

 彼女はオズの手をキュッと握りしめてきながら、ビギナー狩りへと言葉を続ける。


「オズ様はあなた達よりも強いです! とっても強いんです!!」


 正直、ミーシャのその言葉はかなり嬉しい。

 だがしかし。


「決定だな、やっぱりコイツがオズで間違いねぇ!」


 と、オズの正体に確信を持ってしまうビギナー狩り。

 悪気はないとはいえ、ミーシャがオズの名前を呼んでしまったのだから、これはもう仕方がない。


(状況的に戦闘なしに切り抜けるのは難しいな……)


 などなど。

 オズがそんなことを考えていると。


「おい、おまいら! 殺して身包み剥がすぞ! 腐ったとはいえ、あの勇者の元仲間だ! いいもん持ってるに違いねぇ!!」


「おうさ! な〜に、勝てる勝てる!! 俺たちは北方に居たあのエンシェント・ドラゴンを仕留めた猛者だからなぁ!!」


「ケヒャ!」


 と、一斉に武器を手にするビギナー狩り達。

 もうやるしかない。


「ミーシャ!!」


「はい!」


 と、オズの言葉にいつもの元気な返事を返してくるミーシャ。

 きっとすでにオズの意図がわかっているに違いない。

 ならば。


「…….!」


 オズはすぐさまミーシャの方へと振り返る。

 そして、彼は勢いそのままにミーシャの腹へと。


 回転の力が乗った渾身の一撃を——。

 叩き込むのだった。

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