第二十六話 踏破開始『魔王の迷宮』③
「このスキル……やばい」
と、オズは思わず自らの右手を見下ろす。
その理由は簡単だ。
(スキル『腹パン』をすれば、対象が超強化されるのはわかってた)
けれど、まさかここまでとは思わなかったのだ。
オズは少しでもミーシャが危うくなれば、すぐさまフォローに入る準備をしていた。
だからこそ——。
(こうしてバッグの中に、閃光弾とか爆薬……モンスターの気を逸らすための投げナイフや癇癪玉なんかをたくさん持ってきたんだ)
けれど、そんなの使う必要なし。
蓋を開けてみれば、ミーシャの一方的勝利。
そしてそして、なによりもやばいのが。
(これほどに人を強化するスキルが、何の対価もないのか!?)
強いて言えば、殴る際にオズが微量の体力を使うこと。
そして、ミーシャが殴られた瞬間に痛いくらいだ。
(いやまぁ、後者にかんしてはデカいといえばデカいんだけど……)
ミーシャには失礼かもしれない。
けれど、これほどの力を得る対価としては少なすぎる。
実際、飲めば圧倒的な力を得る『狂戦士の秘薬』というものがある。
これは対価として、飲んだ者が数時間動けなくなるという致命的な副作用がある。
一方。
スキル『腹パン』はどうだ。
(ほぼノーリスクで、『狂戦士の秘薬』とは比べものにならないほどの身体能力の向上だぞ)
などなど。
オズがそんなことを考えていると。
「オズ様! やりました! 全滅させました!!」
と、楽しそうな様子のミーシャ。
そんな彼女がオズの方へと走り寄ってくるのだった。
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