第二十五話 踏破開始『魔王の迷宮』②

「オズ様、わたしやれます!! ダンジョンスパイダーを倒してきます!!」


 と、さっきと打って変わって自信満々な様子のミーシャ。

 そんな彼女から、凄まじい生命エネルギーが漲ってきているのを感じる。


 スキル『腹パン』の超強化によるものだ。

 ミーシャもそれを感じとったからこそ、このように自信が満ち溢れているに違いない。


 などと、オズがそんなことを考えた。

 まさにその時。


 ドンッ!


 と、空気を震わす音。

 砕けちるダンジョンの床。


 ミーシャが凄まじい速度で、ダンジョンスパイダーの巣へと突撃していったのだ。

 そして、そんなダンジョンスパイダーもミーシャという危機に気がついたに違いない。


 カサカサ。


 と、不気味な音を立て、ついにどこからかその姿を現し始める。


 ダンジョンスパイダーは大きめのテーブルほどの大きさがあり、かなりの凶暴性と——それに伴う攻撃力を持っている。

 だがしかし。


「やぁあああああああああああっ!!」


 と、杖を構えダンジョンスパイダーを間合いに捉えた様子のミーシャ。

 そんな彼女にとって、ダンジョンスパイダーはあまりにも遅すぎたに違いない。


 ドゴォッ!!


 と、ダンジョンを揺らすミーシャの一撃。

 彼女の杖はダンジョンスパイダーを木端微塵にしただけでなく、凄まじい硬度を誇るダンジョンの壁にさえクレーターを作りだす。


「KyKiki!!」


 と、聞こえてくるダンジョンスパイダーの声。

 きっとミーシャの危険性を正しく認識したに違いない。

 ダンジョンスパイダーは次々に姿を現し、あっという間にダンジョンの通路を埋め尽くしていく……が。


 ガゴォ!!

 ドォンッ!!


 と、なおも響き渡る轟音。

 もはや立っているのもしんどいほどに揺れまくるダンジョン。

 それに伴い吹き荒れる暴風。


 ミーシャだ。

 彼女が杖を振り下ろすたびに、ダンジョンスパイダーが粉微塵に吹き飛び、ダンジョンに災厄のような衝撃が発生しているのだ。


「オズ様! 見てください!! わたし、こんなに戦えます!! あははっ! 何だか楽しくなってきました!!」


 と、不意に聞こえてくるミーシャの声。

 彼女はもう無双の極みだ。


 ダンジョンスパイダーを杖で爆散させたり。

 足で踏み抜いて粉々にしたり。

 はたまた千切っては投げ千切っては投げ。


 そして、そんな光景を見たオズ。

 彼は頬を流れる嫌な汗をかんじながら、自らの右手を見下ろすのだった。


「このスキル……やばい」

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