第二十四話 踏破開始『魔王の迷宮』

 時はあれから少し後。

 場所はダンジョン——『魔王の迷宮』一層。


「ミーシャ、止まって!」


「オズ様、何か居たのですか?」


 と、オズの言葉に対し言ってくるのはミーシャだ。

 オズはそんな彼女へと言う。


「ほら、あそこを見て。少し見難いかもだけど、この通路の先。第二層に続く階段の手前」


「あれは……蜘蛛の巣、ですか?」


「うん、ダンジョンスパイダーの巣だ。ここからだと見えないけど、まず間違いなくダンジョンスパイダーも居るだろうね」


「そんな……あんなところに巣を作られていたら——」


 と、気がついたに違いないミーシャ。

 そう。二層へ続く階段の手前に陣取られたら、戦闘を回避することは不可能だ


「だ、大丈夫でしょうか……わたし」


 と、不安といった様子のミーシャ。

 きっとモンスターと戦うのが不安なのだろう。


(ゴブリンを倒した時は、必死で行動したって感じであんまり覚えてないんだろうな)


 でも、なにも問題はない。

 ダンジョンスパイダーはゴブリンより強いが、ゴブリンより知性がかなり低い。

 そのため、危険度で言えばゴブリンよりはだいぶ楽な相手なのだから。


 それに今のミーシャは、身体強化されていない。

 故に自信がないに違いない。

 こういう時は——。


「お、オズ様……どうにかあのクモを避けて進む方法は……っ」


 ドゴォ!!


 と、オズはミーシャの言葉を断ち切るように、不意打ちで全力腹パン。

 続けて。


 グリ、グリグリ。

 グリッ。


 と、ミーシャの腹にめり込んだ拳を、ゆっくり何度もぐりぐりさせる。

 すると。


「ぅ……ぉえ」


 と、涙と共に口から吐き出してしまうミーシャ。

 きっと相当パンチがクリーンヒットしたに違いない。

 けれど次の瞬間。


「オズ様、わたしやれます!! ダンジョンスパイダーを倒してきます!!」


 と、すくりと立ち上がるミーシャ。

 どうやら、オズの荒療治は成功したに違いない。

 彼女は杖を剣のように構えると、床を爆散させながら、凄まじい速度でダンジョンスパイダーへと突っ込んでいくのだった。

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