第二十三話 新たなる冒険の幕開け②  

 足を一歩踏み込んだ瞬間、外とは異なる冷え切った空気。

 そして感じる、無数の何かが動く嫌な感じ。

 けれど。


「ここが、『魔王の迷宮』……わたし、本当にあのダンジョンにっ」


 と、瞳をキラキラ興奮した様子のミーシャ。

 ダンジョンに夢見る冒険者ならば、誰だってこうだ。


 このダンジョンが持つ恐ろしい気配など、まったく気にならない。

 そんなことよりも、このダンジョンに来れた喜びが勝ってしまうのだ。


(思い出すな。俺もライルやランカとここに初めて来た時のこと……)


 そういえば、もしもライルたちとダンジョンで遭遇したらどうするか。

 殺すとか言われた気がしなくもないが。


(できるなら、穏便に行きたいな)


 などなど。

 オズがそんなことを考えている間にも。


 くいくい。

 くいくいくい。


 と、引っ張られるオズの服の裾。

 ミーシャだ。

 彼女はなおもキラキラした瞳で——。


「それでは行きましょう、オズ様!」


 言って、歩き出してしまうミーシャ。

 オズはそんな彼女を引き留めて言う。


「待った!! 事前に言ったと思うけど、俺達は通常時の攻撃能力が皆無だ! だから——」

 

「そ、そうでした! ウキウキしすぎて、忘れてしまっていました!」


 と、言ってくるミーシャ。

 彼女はやや落ち着いたのか、冷静な様子でオズへと言葉を続けてくる。


「オズ様が索敵をしつつ進んで、基本戦闘は避けて進んでいく。どうしようもない時は——」


「俺がスキル『腹パン』でミーシャを強化する」


「はい! それでわたしが通せんぼしてるモンスターを倒せばいいんですよね?」


「そういうこと。スキル『腹パン』はどうしても、ミーシャに負担をかけちゃうから——」


「そんなことないです!!」


「え?」


「あ、いえ……別に、なんでも……」


 と、なにやら頬を染め、瞳を泳がせながら下腹部を撫でているミーシャ。


 いったいどうしたのか。

 まぁいい。


「とりあえず今日は、帰還するためのポータルがある五層まで行くのを目的にしよう」


「はい! たしか五層おきにポータルがあって、そこから出れば次回以降ダンジョンに入る際——そこから攻略を続けられるんですよね?」


 と、オズへと返してくるミーシャ。

 さすがダンジョンに憧れ勉強していただけある。


「その通りだ。あとこれはまた今度説明するけど、十層おきに『突入したパーティー毎』にリスポーン——つまり再出現するボスモンスターもいるから覚悟しておいて」


「はい!」


 と、オズの言葉に対し。口癖なのか相変わらずの元気な返事をしてくるミーシャ。

 オズはそんな彼女を先導しながら——。


「それじゃあ、行こう」


 ダンジョン五層を目指し進んでいくのだった。

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