第二十話 新たなる希望③

 時はあれから数分後。

 場所はどこか(おそらくミーシャの家)のベッドの上。


「うぇえええええんっ!! そんなのオズ様が可哀想ですぅううううっ!!」


 と、爆泣きしているのはミーシャだ。

 オズが直近の出来事を話したら、このように泣き出してしまったのだ。

 故にオズはなるべく優しい口調で、そんなミーシャへと言う。


「いや、大丈夫だって! 本当にもう大丈夫! 結果的にミーシャのおかげで、スキル『腹パン』は有用だってわかったし!」


「うぅ、でもぉ」


 ぐすっと、少しは泣き止んでくれるミーシャ。

 きっと、彼女はそうとう優しい女の子に違いない。

 それにしてもだ。


(さっきミーシャに言ったことは嘘じゃない)


 スキル『腹パン』という破格の超強化スキル。

 これならば、パーティーメンバーを集めてダンジョンに潜ることは可能。


 要するに。

 オズは再び夢を追い求めることができるのだ。

 と、ここでオズはとあることが気になる。


「そういえば、ミーシャはどうして一人で森林にいたの?」


「はい。ぐすっ……えっと、クエストの途中だったんです。ハチミツの採取をしていて」


 と、オズの質問に返してくるミーシャ。

 なるほど、どうやらオズと同じ類のクエストを受けていたに違いない。


 それならば、一人で森林にいたことにも納得できる。

 だけれど。


「ミーシャほどのヒーラーなら、病人にヒールをして稼いだ方が効率的だと思うけど?」


「そうなんですけど、実はわたし……冒険者に憧れているんです!」


 と、オズの言葉に返してくるミーシャ。

 彼女はこれまでと一転、瞳を輝かせて言ってくる。


「妹が前衛で、わたしが後衛……そうやって、二人で『魔王の迷宮』を踏破するのが夢なんです! だからその……一人でも冒険の練習をしたくて、森の中に……は、反省はもちろんしてます!」


 なるほど、冒険者に性別は関係ない。

 そして、彼女たちも他の全ての冒険者と同じく、冒険の魔力に惹きつけられているに違いない。


 などなど。

 オズがそんなことを考えていると。


「オズ様! この際だから言わせてください! わたしは一人で冒険に出たことを反省しています!! ですから——」


 と、そんなことを言ってくるミーシャ。

 彼女はバッとオズの手を包み込むように掴むと、彼へとさらに言葉を続けてくるのだった。


「わたしとパーティーを組んでくれませんか!?」

 

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