第二十一話 新たなる希望④

「わたしとパーティーを組んでくれませんか!?」


 と、唐突にそんなことを言ってくるミーシャ。

 オズはそんな彼女へと言う。


「え、いや…….妹さんは!?」


「妹はその、実は……」


 と、急に塞ぎこんだ様子になるミーシャ。

 やばい、これは完全に聞いてはいけない話題だった。


 と、オズが後悔する間もなく。

 ミーシャは妹のことについて語り出す。

 それをまとめるとこんな感じだ。


 ミーシャの妹はアリサという名らしい。

 アリサは小さい頃に不治の病にかかり、立つことすらできず入院中なそうなのだ。

 それでも冒険者に憧れ、日夜勉強を積んでいるそうで。


「ふぐ、ぐぉおおおおおおおっ!!」


「お、オズ様! 泣かないでください!!」


 と、オズに対してそんなことを言ってくるミーシャ。

 無茶な注文だ。


 アリサと比べ、オズがいかにぬるま湯に浸っていたかよくわかる。

 ダンジョンに潜れなくなったからと、数週間塞ぎ込んでいた自分を殴りつけてやりたい。


 けれど、いつまでも泣いてるわけにはいかない。

 これではミーシャが困ってしまう。

 現におろおろしているし。


 などなど。

 オズは全力で涙を抑える。

 そしてそのまま、オズはミーシャへと言う。


「す、すまん。取り乱した……ぐすんっ」


「いえ。そんなに泣いてくれて、きっとアリサも喜びます!」


 と、返してくるミーシャ。

 オズはそんな彼女へと言う。


「それで『俺とパーティーを組みたい』ってことだけど、妹のことがかかわってたりする?」


「はい。最初、わたしはヒールで病気を治そうとしたのですが、ヒールのみに注力して学べば学ぶほどにそれが無理だと痛感させられました」


「なるほど。それであの攻撃魔法一切なしの尖ったヒール能力か……と、すまん。話を続けてくれ」


 オズの言葉に対し、こくり頷くミーシャ。

 彼女はさらにオズへと言葉を続けてくる。


「そこでとある噂を耳にしたんです。ダンジョンの中に、万病に効く薬になる素材を落とすモンスターがいるって」


「あぁ、たしかにそれは聞いたことがあるな。たしか二十層付近にいるレアモンスターだったか」


「やっぱり! お願いです、オズ様!! わたしとパーティーを組んで、一緒に二十層までの踏破をしてください!」


「それは——」


「お礼ならします! わたしに出来ることなら、どんなことでもします!! 都合がいいことを言っているのもわかっています、それでも!!」


「ちょ、ちょっとまった!! 別に断ろう的な意味の『それは』じゃないって!」


「……?」


 ひょこりと首を傾げてくるミーシャ。

 オズはそんな彼女へと言う。


「むしろ大歓迎だよ。さっき説明した通り、今の俺はなかなかパーティーを見つけられない状況にある。スキル『腹パン』なんて、説明しても信じる人少ないだろうし」


「え、えと……つまり?」


「つまりOKってこと」


「……」


「それに森林でクエストやってたのってさ。冒険者への憧れっていうのもあるだろうけど、一人でダンジョンに潜る予行演習だったんじゃないの?」


「う、うぐっ」


 と、そんな声を出すミーシャ。

 やはり思った通りだ。


(いざという時に戦えない奴は、パーティーに採用されづらい)

 

 大方、ミーシャは誰のパーティーにも入れなかったに違いない。

 その結果、一人でダンジョンに潜るという暴挙に出ようとしているのだ。

 そんなの放置できるわけがない。


(ってのは建前かな……冒険者としての直感が告げてる。今の俺とパーティーを組んでくれるのは、ミーシャしかいないって)


 などなど。

 オズはそんなことを考えたのち、ミーシャへと手を差し出す。


「これからよろしく頼む」


「はい! こちらこそよろしくお願いします、オズ様!!」


 と、オズの言葉に対し返してくるミーシャ。

 そんな彼女はオズの手をしっかりと、掴んでくれるのだった。

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