第十一話 ファーストコンタクト

 時はあれから少し後。

 場所はパンデモニウム近くの森林。


「ちょっと揉めちゃったけど、無事にクエストを受注できてよかった……それにしても、あの受付の人には悪かったな」


 向こうとしては心配してくれただけだろうに……後半、オズは少し語気を強くしてしまった。

 今回のクエストが成功したら、報酬で何かお詫びの品でも買って渡そう。

 ともあれ。


(今はクエストに集中だ! それこそ、初めてクエストを受注した時と同じ気持ちでやらないと!)


 なんせ何度も言う様に、今のオズは戦えない。

 スライムなどの下級モンスターとの戦闘ですら致命的なのだ。


(条件だけで言えば、武器を全く整えてない無謀な駆け出し冒険者よりもなお酷い)


 重要なのは索敵と警戒。

 などなど、オズはそんなことを考えながら森林の中——クエスト目標であるハチミツを探し始める。


 ……。

 …………。

 ………………。


 そうしてしばらく経ったころ。

 オズは木によりかかり、鞄の中に入れた瓶を確認中。


「よし、だいぶ集まってきたな」


 このペースならば、あと数時間で目標数の倍の値を確保できる。

 そうなれば、追加報酬も手に入るのでだいぶ美味しい。


(それになにより、ここまでモンスターとの戦闘を完全回避できてるのがデカい)


 モンスターとの遭遇自体は、数回あった。

 けれど、事前に索敵していたのと警戒していたおかげで、いずれもすぐに逃げることに成功しているのだ。


 そして、この結果はでかい。

 その理由は簡単だ。


(今の俺でも、この手のクエストなら普通にこなせるという確証が持てた)


 これならばやっている。

 そんな自信が持てたのは、やはり大き——。


「きゃあああああああああああっ!!」


 と、オズの思考を裂く様に聞こえてくる女性の悲鳴。

 しかも、響き方からしてかなり近い。


「無視していいわけがない!」


 と、オズはすぐさま走り出すのだった。

 先ほどの悲鳴が聞こえてきた方へと向けて。

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