第十二話 ファーストコンタクト②

 そうして現在。

 オズは悲鳴が聞こえてきた場所へとやってきていた。

 結論から言うと。


(状況は……最悪だっ)


 ただのモンスターに襲われていたり、倒木に挟まれたり。

 そんなことならば、今のオズでも対処は可能。


 そう考えて、ここまで全速力で来たのだ。

 だがしかし、オズが隠れて様子を伺っている木々の先では。


「い、いやっ!」


「Gg!」


「Gyagya!」


 と、怯えて声を上げる女性。そんな彼女を取り囲み、意味のわからぬ声をあげているのはゴブリンだ。


 ゴブリンは見た目と異なり、かなり知性が高く凶暴なことで有名だ。

 そして執念深い。


(どうする? ゴブリンが相手だと、俺が囮になって逃すって手はまず通じない)


 そんなことをしても、まず間違いなくオズはスルーされ女性が狙われる。


(だったら、彼女を連れて一緒に逃げるのはどうだ?)


 いや、それも現実的ではない。

 執念深いゴブリンのことだ——どこまで追い回されるか、わかったものではない。


(冷静に考えるなら、俺が取るべき選択肢は一つだ)


 オズが戦えない以上、すぐさまここから去るべきだ。

 そして、街に戻り戦える者を連れてくる。

 

 これこそが誰がどう見ても正解。

 今のオズが飛び込んでも、状況を悪化させかねない……けれど。


「Gyaaaaa!」


 と、棍棒を振り回し威嚇している様子のゴブリン。

 奴らの中の数匹はもう今にも襲いかかりそうだ。


(こんなの街に戻って助けを呼んでる暇があるのか?)


 それに。

 そんなことより。


「だ、誰か……誰か、助けてっ」


 と、怯えた様子でへたり込む少女。

 この状況を黙殺できるわけがない。

 

(そうだ。俺が憧れた冒険者は、こんな時に怯えた女の子を置き去りにしたりしない!)


 考えたのち。

 オズは近くにあった枝を拾い、様子を伺っていた木の影から飛び出す。


 そして、彼は不意をつく形でゴブリンの包囲内に突入——少女を庇う様に立ちながら言うのだった。


「ここからは俺が相手だ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る