第七話 仲間との絆②

 結果は惨憺たるものだった。

 どういうことかというと。


「く、そ……なんだあの、怪物は……」


「ん……強すぎ、る」


 と、地面に大の字に倒れ込んでいるのはライルとランカ。

 二人に怪我こそないものの、疲労困憊といった様子だ。


 件のスライムと戦闘した結果だ。


 無論、最終的に勝ちはした。

 けれどそれは『腹パン』の効果が切れ、スライムが弱体化してからの話だ。


(なんだよ、このスキル……なんだよこれ)


 オズが攻撃を仕掛け、『腹パン』によって強化されたスライムはまさしくモンスターだった。

 万が一スライムの知性が高ければ、この場にいる全員が死んでいたに違いない。


 無理だ。


 やはりオズの冒険者生命は……少なくとも、戦闘職としての命は絶たれた。

 目の前がどんどん真っ暗になっていく感じがする。


(ダメ、だ。今は個人的なことで、絶望に浸る、な)


 今はそんなことより、しなければならないことがある。

 と、オズはライルとランカの元へと近づいていく……そして。


「ごめん、全部俺のせいだ。本当に——」


「いや、マジでその通りだわ」


 と、オズの声を断ち切る様に聞こえてくるライルの声。

 彼はふらつきながら立ち上がると、オズへと言葉を続けてくる。


「今まで強かったから黙ってたけどよ。おまえ、邪魔なんだよ」


「……え?」


「戦闘で使い物にならない今なら、余計に邪魔だわ。正直鬱陶しいんだよ、おまえ」


「ライル、いったい——」


「俺は勇者だぞ!! この世界で一番優れた男なんだ!! 変に目立つおまえが居るとな、俺が輝かないんだよ! そのスキルを取得した時だってなぁ、俺を庇ったとかなんとかで……クソが、恥をかかせやがって!」


「そ、んな」


 嘘だ。

 ライルがこんなことを言うはずがない。

 きっと冗談に違いない。


 などなど。

 オズはそんなことを考えながら、ランカの方へと視線を向ける。

 するとランカはゆっくり立ち上がりながら。


「強かったから一緒に居ただけ……役立たずになったなら、もう要らない」


 と、そんなことを言ってくるランカ。

 彼女はゴミでも見るようにオズを見たのち、さらに言葉を続けてくる。


「本当におまえはハズレだった。ランカはランカ達の引き立て役が欲しかっただけなのに……ランカ達より前で戦って、あげくお兄を庇う? 信じられない……死ねばよかったのに」


 と、見たこともない冷たい視線のランカ。

 やがて彼女はライルと向き直り言う。


「お兄、行こ……ゴミをようやく捨てられる。体裁気にした、仲良しごっこには飽きた」


「ああ、そうだなランカ! 次は俺より目だたないブサ男か、お前より可愛くないブス女を仲間にしよう!」


 と、ランカへと返すライル。

 彼はランカの手を取り、パンデモニウムに歩き去りながら、一瞥もくれることなく言ってくるのだった。


「あぁ、そうだオズ。おまえ、二度とダンジョンに潜るなよ。もしその目障りな面をダンジョン内で見たら……殺すからな?」

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