第六話 仲間との絆
時はダンジョンでの一件の翌日——昼少し前。
場所はパンデモニウム近くの平原。
「ん……準備できた。試してみて」
「こっちも準備OKだ。いつでもやってくれ」
と、聞こえてくるのはランカとライルの声だ。
そしてオズはと言うと——。
「……っ」
と、真剣にスライムへと向き合っている。
無論、普段のオズからしてみれば、スライムは『真剣に向き合う必要すらない』ただの雑魚モンスター。
だがしかし。
今のオズにとってはそうではない。
スキル『腹パン』
保有者が肉弾攻撃を行った場合、その威力に応じて攻撃対象を超強化する。
スキル『不殺』
保有者が攻撃を行った際、いかなる場合においてもその攻撃で対象を撃破することができない。
この二つのスキルがあるからだ。
そして現在、オズたちはこのスキル二つの実験中。
オズがスライムと戦闘を行い、何かあればランカとライルが対処する。という作戦だ。
(これは一縷の望みだ。ひょっとしたら、このスキル達は単なる見せかけて的なやつで、実際に効果は発揮しないとか)
ワンチャン、効果を発揮するかどうか選べるタイプ。
要するに常時発動型じゃない可能性とかいうパターンもある。
なんにせよ。
これを提案してくれた二人には感謝だな。
そして。
(二人の準備が整ったなら、あとは……俺の番だ!)
怖い。
これで万が一、スキルが発動してしまったら。
それすなわち、冒険者として致命傷だ。
オズは他の全ての人と同じように、『魔王の迷宮』を踏破することを夢見てきた。
子供の頃からずっとだ。
その夢が唐突に終わってしまうかもしれない。
もしそうなれば、オズはこれからどうやって生きていけばいいのか。
(いや、前向きに考えるんだ!)
もしそうなったとしても、冒険者としての道はある。
実際、戦闘能力のない冒険者は荷物持ちとして、戦闘職の冒険者に同行している例があるのだ。
(ランカとライルのためなら、荷物持ちでも雑用でもなんでも構わない。俺は今のパーティーで……この三人で『魔王の迷宮』を踏破したいっ)
そのためにまずは見極める。
スキル『腹パン』とスキル『不殺』を。
考えたのち。
オズは構を取り、スライムへと拳を突き出すのだった。
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