第五話 少し昔のお話②
「俺なら大丈夫だ。それより、二人が無事でよかった」
「そうか、よかった……それよりさっきは庇ってくれてありがとな!」
と、オズの言葉に返してくるライル。
ライルはオズへとさらに言葉を続けてくる。
「何にせよおまえのおかげだ。オズが俺を庇ってくれたからこそ、俺とランカがトドメをさせた」
「最後以外はあんまり役に立てなかったけどな、俺は」
「そんなことはない! 敵の障壁を崩し、武器を破壊し……何度も何度も攻撃を弾いてくれた! 本来脳筋ジョブであるカラテマスターとは思えない貢献だ!」
「ライルにそこまで言われると照れるな」
「さぁ、立てるかオズ?」
と、手を差し出してくるライル。
オズがそんな彼の手を掴もうとした。
まさにその時。
「ん……ダメ」
と、聞こえてくるランカの声。
同時、彼女はライルの手を杖でコツンと叩く。
そして、彼女はオズへと言ってくる。
「敵が最後に放ったあの攻撃……なんだか嫌な感じがした」
「俺がさっき受けたやつだよな?」
「ん……そう。体に異常がないか確認してから動がないと危険、お兄はバカ」
「体は大丈夫そうだけどな」
「痛いところもない?」
「ないな」
「だったら余計に危険……死に際の一撃がノーダメージなんてありえない」
なるほど。
ランカが言いたいことはわかった。
要するに彼女はこう言っているのだ。
ダメージ以外の何かを受けた可能性がある。
それを確認する方法は一つだ。
オズは目の前に手をかざし、自らのステータスウィンドウを表示させる。
(ジョブや各種能力値に問題はない……あとは)
と、オズは保有スキルを確認していく。
すると、そこに見慣れないものが二つ。
スキル『腹パン』
保有者が肉弾攻撃を行った場合、その威力に応じて攻撃対象を超強化する。
スキル『不殺』
保有者が攻撃を行った際、いかなる場合においてもその攻撃で対象を撃破することができない。
「っ!?」
と、オズは思わず息を呑んでしまう。
その理由は簡単だ。
(なんだこのクソスキルは!?)
スキル『腹パン』はジョブ『カラテマスター』であるオズにとって致命的だ。
なんせ、攻撃しても敵を強化してしまうのだから。
加えて後者のスキル『不殺』。
これのせいで、どうにか『腹パン』の効果対象外の攻撃をしても、敵を撃破できないことになる。
(冒険者として終わりじゃないか、こんなクソスキル!!)
落ち着け。
とりあえず、今は情報共有が先だ。
オズはそんなことを考えた後、ライルとランカにステータスウインドウを見せる。
そして。
彼は先程自分が考えたことを全て、二人へと伝えていくのだった。
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