第四話 少し昔のお話
冒険者にとって、この世界に魅力はなくなった。
地図は埋め尽くされ、あらゆるダンジョンは攻略され。
魔王はとうの昔に討伐された。
だがしかし。
かつて魔王城があったこの街『パンデモニウム』は違う。
この街には誰にも攻略されていないダンジョンがある。
魔王が討伐された際、残りの魔力の全てを使って作り上げ。
魔王が己が全ての富を最奥へと転移させたダンジョン。
魔王は死ぬ間際に言い残したらしい。
世界を変えられるほどの宝は、人間などには渡さないと。
あらやる冒険者を熱中させ。
あらゆる人々をこの五百年夢中にさせているダンジョン。
その名は『魔王の迷宮』。
そしてその最奥に眠るのは『魔王の遺産』。
最奥にあるものの正体は誰もわかっていない。
巨万の富とも、不老長寿の薬とも言われている。
いずれにしろ、全ての冒険者はこの街。
このダンジョンに集まっている。
そして当然。
オズもそんな冒険者の一人なわけだ。
そしてそしてこれまた当然。
ダンジョンは安全ではない。
時はオズがミーシャと出会うよりも少し前。
場所は『魔王の迷宮』十八層———強力で危険なモンスターが湧くトラップ部屋。
「オズ、大丈夫か!?」
と、聞こえてくるのはこのパーティーのリーダー——ライル・クロードだ。
青い短髪に青い瞳。高身長を包む鎧に真紅のマントは勇者に相応しいに違いない。
「ん、敵は倒した……オズ、怪我は?」
と、さらに聞こえてくるのはライルの妹——ランカク・クロードだ。
ライルと同じ青いミディアムロングの髪と、美しい青い瞳。やや貧しく低身長ながらも、その身を包む魔法使いに相応しい黒のワンピースとローブからは知性を感じられる。
「ちっ! あの野郎、死に際によくも! いや……そもそも俺があんな宝箱をあけなければ、こんな部屋に転移されなかったのにっ! オズ、本当に怪我は無いのか!?」
言って、駆け寄ってくるのはライルだ。
オズはゆっくりと身体を起こしながら、そんな彼へと言うのだった。
「俺なら大丈夫だ。それより、二人が無事でよかった」
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