第2話 疑似待ち合わせ
和弥は歩行者天国の露店の後ろ側の歩道を歩いていたので、客側の道路に出ようと足を向けた。
すると、大学生の彼女がまだ売り子から焼きそばを渡されていないことに気付く。
は?まだナンパ中かよ、と半ば呆れた和弥は、見届けてしまったことと老婆心から助け船を出してやるか、と二人に近付くのだった。早く帰りたいだろうに。焼きそばが冷める。気温は高いけど。
「ごめん、待った?」
いきなりそう言って二人に歩み寄った。いかにも待たせて悪いという顔をする。
振り向いた当人たちは当たり前のように「は?」という顔をした。
「いえ、全然」
彼女は普通に答えた。
当然と言えば当然である。初対面なのだから、待ってなどいない。
彼女は機転を利かせて言っているのか、それとも天然なのか……?表情からは疑問形マークが多少読み取れる。
先程からのやり取りを見る限りでは天然らしいと思われた。
和弥は「じゃあ、行こうか」と、駅方面を軽く指で示した。そこで彼女は少しだけ理解が出来たのだろう。
「あ、うん、はい……?」
多少疑問形なのが気になったが、和弥はスタスタと歩き出した。付いて来ればいいのだ。ここから離れれば目的は果たせる。女子大生は和弥につられて駅の方へと歩き出そうとして、売り子がまだ持っているもモノを見る。
彼はポカンと二人のやり取りを眺めていたが、直ぐに察したらしかった。今度は素直に焼きそばの入ったレジ袋二つを彼女に渡した。
「ありがとぅっしたぁー!」と大声で叫んで、それ以上は絡まなかった。(なんだよ彼氏がいたんかよ)
と顔面には書いてあった。
実は彼女は和弥のことを売り子だと勘違いしていたのだった。
焼きそばを運んであげようか、とか、どこまで持って行くの?とか聞かれた為に、運ぶ新手のサービスでも始めたのだろうか?あるいは見送りサービスでも?と思っていた。
(駅までお見送り?ヘンな屋台)
妙な気分を感じつつも和弥の後を付いて歩き出した。
和弥はというと、同じ駅方面へ向かうわけであるが、屋台を離れ歩行者天国を抜けたならばこの辺でもういいか、と足を止めて振り向いた。
「あれ、何やってるの?」
彼女は少しだけ離れたベンチの上で、何やらゴソゴソとトートバッグの中を整理していた。
和弥は屋台から離れたところで無言で去ろうと考えていたが、彼女が予想外の行動をしていたので、つい声をかけてしまったのだった。
……全てに「不思議な間」があった。
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