5-2
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[十年前の
翌朝には地元の人々も集められての大
そのような中、一日、二日と
最初は何が何でも朱音を捜し出すと、仲間と自分の心に
「近場を捜して見つからないなら、死んでいて
その言葉を聞いて、透は数日前に見た光景を思い出す。
数日前──朱音たちとタイムカプセルを
おそらくそれは野鳥であっただろう、無残な野生動物の
男子はともかく、女子には
しかし意外なことに朱音はじっ、とその光景を見つめて
透は「あっちに行こう」と、
その時朱音はまるで独り言のように呟いた。
「イキモノは死ぬと、こうやって他のイキモノの
朱音はどこか夢見るような声で、呟く。
「きっとあたしも、こうなるんだろうな……」
朱音に対してみんな返す言葉が見つからないのか、
やがてタイムカプセルを埋めるのに
忘れていた──大人たちの会話を聞くまでは。
透は
やがて思考の中であの野鳥の亡骸と朱音の姿が重なっていく。
(嫌だ、見つけたくない、見たくない……!!)
森の中で見たあの残酷な光景が、知っている存在で〝現実〟になってしまいそうな
──もし彼女が死んでいたら、と考えたら見つけるのが怖かった。
あんなに見つかってほしいと願っていたのに、見つけたくないという恐怖。
瑠璃はずっと泣きながら、何度も朱音の名前を呼んでいた。森の中で子どもが何日も生き延びることなんて難しいのに、瑠璃はずっと朱音が生きていると信じているみたいだ。
だが朱音は見つからなかった。
それは、透と朱音で使うはずだった
それがまるで形見とばかりに置き去りにされていたのが、あまりにも透にとって残酷だった。準備していた朱音に申し訳なくて、その道具を使わないことを内緒にしていた。ちゃんと
言葉が足りなかった。
見つかってほしくないと願ってしまった。
(
透はショックから倒れ、そのまま東京へと運ばれた。友人の
全て自分のせいだと苦しんだ。
特に彼女を見つけるのを
怖くて、ひとりで逃げてしまった。
あれから朱音のことを考えることもできず、彼女のことを聞くことができたのは、行方不明になってから一年も過ぎた
朱音は、
もちろん生きている可能性はほぼないだろう、と。
彼女を殺してしまった。友だちで、大切な仲間だったのに、自分のミスで殺してしまったのだと透は再び心を
仲間を作らない、誰にも心を許さない、
だから目立たず、それでいて
大学に入って瑠璃の姿を見かけた時、ようやく忘れかけていた記憶が再びこじ開けられそうになっていた。瑠璃は、朱音のような姿をしていた。
男の子みたいな気の強い少女ではなく、どこにでもいる、ごく
あれから十年、届いたのは空からの招待状──。
再び、この森に足を
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『──もし、あたしが森で死んだら──きっと、こうなるんだろうな……』
あどけない、
嫌だ、やめてくれ! お願いだ、もうやめてくれ──!!
(ナイショだからね──)
ふと、閉ざしていない耳には、いたずらっぽく笑いながら呟いたあの声が聞こえた。
笑っていた。いつだって、笑顔を向けてくれた。瑠璃がいて、空がいて──朱音がいた。
森の中で手を取り、走り、笑って……。
朱音、朱音に……会いたい。
足りないんだ。瑠璃の言う通り、仲間が
会いたい、朱音に、会いたい。
(透くんはすごいね)
(リーダーで、みんなから頼りにされているよ)
(透くんがいれば安心だね)
違う、違うんだ──。
朱音がそう言ってくれたけれど、みんながいたから「リーダー」でいられた。朱音がいたから、いつだってみんなの空気を柔らかくしてくれた。瑠璃がサポートしてくれたから、透は無茶もできたし強くいられた。
そして空がいたから──護らなきゃいけないって思えるように自分を
今、瑠璃は相変わらず「相棒」だと言ってくれるけれど、本心をまだ明かしてくれない。
空はずっと大人の世界に生きていて、だけどどこか不安になるような言動をしている。
自分に何ができるだろうか。あの時、逃げ出してしまったのに。
……もう一度、あの時のようになれるか?
透は顔を上げて、目の前で腐敗していった少女に目を向ける。
今までの夢とは違い、そこにはあの頃と変わらず
(──透くん、約束だよ)
そう、透はかつて朱音とある約束をした。瑠璃や空にも話すはずだったのに、あのゴタゴタで「仲間だけの秘密」にするのが、透と朱音だけの秘密になったこと。
今まで忘れていた訳じゃない。ただ言い出すきっかけもなく、それ以上に朱音の事件が透から告げるべき言葉を奪い、
(見つけられなくて、ごめん──朱音……だけどもう逃げない!)
何があっても、あの時のようにみんなが一緒にいて、楽しかったって言える日にすると透は誓う。朱音がいた時と、あの時間と同じ世界に──。
君が消えた夏、僕らは共犯者になった 蒼木ゆう/ビーズログ文庫 @bslog
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