第五章 『仮面』仮面は桶に及ばない
5-1
「
飲み会がお開きになった後、
ただし、電話の内容に不正がないか、自動的に記録を取られることは
そんなことは承知で、あとで
それは──ライバルを
空に「どうしても相談したいことがある」と言って、連絡してきたのだ。
『確かにカメラは入り口とかにはあるけれど、部屋の中までは設置していないね。でも他にも
「う~ん、でもそれで
『何か心配事でもあるの?』
「うん、あのね……わたしはこんなこと言いたくないんだけど、わたしって気が弱いから、強く言われちゃうと言い返せないこと多くて……こんな自分は
『
「カード見せてって。でもダメなことなんだよね? わたし、どうやって断ったらいいか……」
『そうか……わかったよ。実際にカードを不正に見ようとしたらこちらにもわかるから、君は心配しなくていい。とにかく、見られないように自衛だけはしていてね。友だちに不正をさせたくはないよね?』
「うん。ごめんね、きっと麗ちゃんも悪気はないと思うの。ただバッグが
か弱い自分を
そんな言葉を聞いて、空は電話口で小さく口を
『わかったよ。このゲームに不正は許さない。とにかく、君は安心してゲームをするといい。それから友だちのことを告発するのだから、君も
「ちょ、空くん……!?」
電話は切れた。
それから何度もかけ直しても『ただ今お
蓮実は
「あったまきちゃう! 何さまのつもりよ!? ふん……でもダメ、今はまだダメ」
そう、これは絶好のチャンスなのだ。あのワガママで
彼女がどうやったら傷つくか、友だちのふりをしてそればかり考えていた。周りから見ればある意味
そして麗に最も
〝女〟として
彼女は自分の容姿に自信を持っている。人より派手な目鼻立ちに、すらりと
だからこそ男性はみんな自分に目を向けなくては気が済まない。そしてそれは外見が優れていたり、お金や地位を持っている人間ならなおさらだ。
そういった意味で空は麗にとって全て
だが、そんな麗がゲームから
麗が欲しがった「空の彼女」という立場を見せつける──それが楽しみでならない。
暗い、暗い
この十年、麗と出会ってから何度も
蓮実は自分の
(久々に本気で腹立ったなぁ。でも
ふと、自分に空から送られてきたカードを蓮実は思い出す。
送られてきたカードは『仮面』、書かれているメッセージは[仮面は桶に及ばない]だ。今日の勝負では『桶』のカードを手に入れたので、それで勝負をした。最初に
その『桶』も『0には及ばない』と書いてある。
他のみんなと比べてどれくらい強いカードだったのだろうか。少なくとも
やっかいなゲームだが、真面目に取り組んでいるように見せられれば空も満足するだろう。
十年も前にこの森で死んだ
どんなに空が朱音のことを思っていたって、
そう、空は朱音みたいな人当たりが
本当に女の子らしい自分に敵うはずがない、と。
ともあれ──。
「……朱音がいなくて、本当に良かった」
蓮実は
そして蓮実は自分のカードを小さなポーチに入れて、部屋を出る。次の作戦に出るためだ。
ここ一日や二日で空を
蓮実は麗の部屋に行き、リビングでおしゃべりしないかと持ちかけた。
最初麗は「アタシの部屋でもいいじゃん」と言っていたが、蓮実には彼女の部屋に入れない理由があった。それは彼女が持っているポーチの中身である。
『他の人の部屋に入る際に、最初に
電話の使用条件の他に、部屋に置かれた注意書きにあったものだ。持って入ろうとすればセキュリティ・アラームが
不正を見張るためとはいえ、
それゆえに蓮実はカードを持ったまま、麗の部屋に入ることはできない。けれどこのカードを持っていなければならない〝理由〟があった。
ともあれ
夕飯の際に出張でディナーを用意しに来てくれた
麗は適当な場所に
そんな麗に対して蓮実は「まずはルールの
そのことは成人式やその後の同窓会でも見ていたから、蓮実も良く知っている。
だが今は蓮実が「ここならすぐ部屋に近いからいいじゃない」と言い、調子よく
蓮実の言葉にのせられ、麗はついつい吞み過ぎていた。麗自身も少し
誰にも言えないが、麗はあれからずっと
本当の麗は
そうやってグダグダと話している内に、麗はいつのまにか注がれるがままに酒を吞み、やがて机につっぷすようにして
その様子を確認すると、蓮実はポーチから『仮面』のカードを取り出した。そしてそれを麗の手に
そのまま蓮実は部屋に戻ると、すぐに『
そして──。
「酔った勢いとはいえ、わたしのカードを無理やり奪って見てしまったんです……」
やがて蓮実はスタッフと共に麗のところへやってきていた。その
ハラリ、と
「まさかこんなことをするなんて、ね……麗ちゃんのこと、信じていたのに」
「蓮実……何、一体……どうしたの?」
寝ぼけ
「麗ちゃん無理やりあたしのカードを取り上げて、見たじゃない。酔っていたからって言うの? あんまりだよ……ズルしないって約束したのに」
「え、し、知らない! どういうこと!? きゃ、ちょ、ちょっと! 何すんのよ!?」
本当に訳がわからず
だがそんな彼女の
「不正が発覚
「待って、アタシは何もしていない! 誤解よ、ねぇ蓮実! ちょっと……違うったら!!」
蓮実に助けを求める麗。けれど蓮実は顔を
単にゲームの不正をしたというよりも、それはまるで重い
そんな麗の姿を、蓮実は顔を
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