3-2
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「かーずーきー、お前なんかカード見つけたか?」
「お
「え、じゃあオレのカード探しに付き合えよ」
「いいけど、そうしたらお前が何の宝箱を開けたかわかっちゃうぞ。ヒントカードの入った宝箱ならともかく、勝負用のカードを取る時はおれが見る前に言ってくれよ」
「ってか、カードってどういう状態で宝箱に入っているんだ?」
「まずカメラみたいなのがあって、そこを
「へぇ……で、お前は最初に出てきた勝負用のカードをそのまま貰ってきたんだ」
「だって、誰かに持って行かれたら次にカードが見つけられるかわからないし、まだルールも良くわかんないのに、どのカードが強いなんて決められないだろ? それにどこをほっつき歩いても森だし、夕方まで部屋でゆっくりしたいインドア派だから」
「ああ、そういえば個室で何でもあるよな、一流ホテル並みに。あれって昔の合宿所があった場所を
「そうだよね、確かに。それともこの辺にこれから何か大きな観光
「うわ、一樹って結構ドライだな。子どもの
「そういうけど、空くんに誘われるまで一度だってここに来たことないもん。達也はあれからこっちに来たことあった?」
「ないない。だって何もないところじゃん。あの夏合宿って、子ども会で夏休みの間に子どもをひとりにしておけないからって理由で、同じような奴らを集めての合宿だったんじゃないか。自然の中でのびのびと、って聞こえはいいけど、同じ夏休みでも
「だよな、結局は大人の都合なんだよ」
「まぁ楽しかったこともあったけど、大人になってまでここに来たいって思ったことはないな。でさ、ここに二
「お前って奴は……まぁ、賞金貰えるって聞いておれも何に使おうかちょっと考えたけど。新しいPCとか買いたいぐらいかな。今やっているネトゲだっていつバージョンアップして最新スペック要求されるかわかんないし」
「だろ? だからここはひとつ協力して情報共有しねぇか? お互いに出し
「アリだって言ってたじゃないか。他のプレイヤーと情報の共有は自分に不利になるけれど、したいならしても構わないってさ。とにかく何のカード持っているかは言っちゃダメってこと。それを教えたら
「なるほどね……あ、あれ、
「あ、本当だ。おーい、透く~ん!」
少し離れた場所から名前を呼ばれて、透はふたりの気配に気づく。
達也と一樹に呼ばれ、透はふたりの元へやってきた。
「達也に一樹、二人
「うんにゃ。オレ、一個も見つけられねーし」
「へへ、おれは三つ見つけたぜ。透くんは?」
「……十個ぐらい、かな」
「えっ!?」
「マジで!?」
達也と一樹が目を
「あ、うん……だけどヒントカードばっかりだったし、他のカードはどれ持っていくか
「リーダー!!」
「さすがおれたちのリーダー、ヒントくれよリーダー!!」
透は内心「変わらないな」と呆れ半分、
そんな過去を思い出しながら透は苦笑いを
「都合が良い時だけリーダー
バカにしたつもりではなく、本当に思わず昔のリーダーだった頃に戻った口調でふたりを引きはがす。ヒントは別に教えてもいいとは思った。
ヒントを教え合うこと自体はルール
あまりにもあっさりとたくさんの宝箱を見つけた透。
「リーダーはどこ歩いてそんな見つけたんだ?」
「この小路沿いにぐるっとS字型で回って、ジグザグの大きな道があるだろ? あそこを回ったぐらいだけど」
特に
(何度も、通った……
閉ざされていた記憶の
理由は『安全のため』『準備のため』。その時、ひとりじゃなかった。
(どういうことだ……?)
それは偶然じゃない。透がとあることに気づいた時、一樹が「どうしたんだ?」と
だが、透は心がごちゃごちゃしていて、上手く説明できない。
偶然なのか本当にその通りなのか、もし必然だとしたら……少し背筋が寒くなった。
「……いや、たぶん気のせいだと思う」
偶然ではないのかもしれないが、今はそう言うしかなかった。ともあれ、透からヒントを受け取ったふたりは、その道を行くことにした。
そんなふたりを見送って、透は思わず独り言を
「あれ、
それは透が
そして──十年前、朱音が消えてしまった道でもあった。
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