第三章 『桶』桶は0より小さい
3-1
「いいじゃない、教えてくれたって。アタシたち親友でしょ?」
「
「
「……わたしは、不正なんかしないでゲームに勝ちたいの。だって、後ろめたいと思わない? ずるして勝つなんて、ダメだよ。それに参加しているだけで十万円
「十万なんて、ミュウミュウのバッグすら買えないじゃない。もう、蓮実は使えないなぁ。こうなったら空のこと、落としちゃうかな? だって社長だし、
「社長じゃなくてCEOでしょ。招待状ちゃんと見たの?」
「どっちも同じようなもんでしょ? とにかくお金持ちには変わりないんだから。昔は何かこうぽやっとしていて
「やめなよ、麗ちゃん今付き合っているカレシいるんでしょ?」
「マンネリもマンネリ。アイツ、お金もないし出世もしそうにないから、これ以上付き合っていても良いことなさそうだし。顔だけはいいけど、それじゃこれから将来考えても楽になりそうにないしなぁ」
「同窓会はコンパじゃないんだから」
「似たようなもんでしょ。ねぇ、だからどっちか考えてよ。マジでゲームに勝つ方法か、空のことを落とす方法か。ってか、どっちかっていえば将来のことも
「何でそんなことをわたしが考えなきゃいけないの?」
「少しは本気になってよ! アンタはアタシより頭イイんでしょ、こういうところで使わないでどうすんのよ!?」
「──いい加減にしてよね」
「……何、よ?」
「そっちに協力しなきゃ、使えないって言うの? 昔と変わらないわよね、そういうところ。少しはマシな人間になったかと思ったけど」
「蓮実……何、マジで
「当たり前でしょ。同窓会も
「だってあれは──」
「今からでも麗ちゃんのカレシにばらしてもいいんだからね。ううん、それよりも空くんに話した方がいいのかな?」
「何で
麗と蓮実は高校まで同じところに通っていた。その時、共通の友人の
そんな
そのことが周囲にわかると麗は周りから避けられ、
ただ、その中で蓮実だけは
このことで『麗ちゃんも
けれど蓮実はその度に「メールで全部記録が残っているんだけど」と言って、麗を
高校を卒業してからは少しだけ
だけど
そして今また、蓮実は内心麗を見下す材料ができて、暗い喜びを覚えながらも表面上は〝優等生の顔〟で、麗の提案をやんわりと窘めていた。
「ともかく、ゲームに勝つ方法なんて、ルールのわからない内には考えられないから、やるんだったら空くんでも
「いいのよ。最終目標はセレブになることなんだから」
「で、今のカレシはどうするの?」
「そりゃ別れるわよ。どう考えたって、空の方がスペックは上じゃない。このゲームにアタシたちを誘ったのだって、お勉強ばっかりで友だちとか作っていないんでしょ? だったら恋愛経験だってあんまりなさそうじゃない。だったらちょっと迫ってみればイケると思わない?」
「……麗ちゃんがそう思うなら、そうなんでしょ」
「やだ、蓮実冷たい! ねぇ、蓮実だって今の生活に満足している訳じゃないでしょ? アタシ絶対
「別にお金持ちとか、そういうのに興味がある訳じゃないけど……」
麗の言葉に蓮実は
だが、
男の人というのは結婚するなら麗みたいに派手で
麗に言われるまで思ってもみなかったが、自分とは違う世界にいる空が、もしも
恋愛感情があるからではない、打算だ。
きっと仕事が
麗のようにガツガツするのはみっともないと思いつつも、自分が何をしたいとか、これからどう生きたいというのがあまりにも
蓮実のそんな気持ちを
「そんなんでどうするの? 若いってスゴイ貴重なのよ。今の内にイイ男
「……別に、わたしは空くん
「じゃあアタシが空をゲットするからね! リップ、何色にしようかなぁ」
「はいはい……まずはゲームのカードを探しましょ。用意したゲームにやる気が見られないって、それだけでマイナスイメージになると思うけど。後のことはまた夜にでも話そう。ほら、見て……あそこにもスタッフがいる」
「本当だ。聞かれちゃったらヤバいね。わかった、じゃあとりあえずはマジに宝探ししようか。今日だけでゲームの決着がつくなんてことないだろうから、そこそこゲームは
それが今も昔も変わらないと、蓮実は呆れていた。自分もそんな彼女から離れられないでいるのに──。
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