43話 伊上から植志田への説明
「…そんなわけで、そっからずっとヨリコが現れるんよ」
植志田は賢者のように悟った様な表情をしていた。
なんというか…色々あったのだろうな、という顔だった。
何があったの、と細かく聞くのは野暮というか、無遠慮過ぎる。
だが、それを心から嫌がっているのではなく、なんやかんやで楽しんでもいるのだろう。
「今度はこっちから聞いていいか?」
植志田はハアッ、と一つ大きく息を吐いて、芝生に手を付けた。
彼なりに頑張ってヨリコの事を早口で説明して少々疲れたようだ。
「幕生くんのこと?」
「うんにゃ、結局はそこに繋がるんだろうけど…先公、ヤられたろ。狩藤のアホと、主任?だっけ。主任はヨリコがヤッたてのは本人から聞いたけど、狩藤の件に境子は巻き込まれたのか?」
狩藤が殺されたことは、もう知っているようだ。連絡網でも回ってきたか、朝に確認しなかった新聞に載っていたか…。
「なんか色んな所に、異空間…ダンジョンと呼ばれるものが出来ているっていう記事、見た?」
「見た見た。なんで全国紙の一面に載るんだろ?って思ったけど、ヨリコのこと考えたらああ…って」
「実は、海静にもあったの、ダンジョン」
「へ!?」
伊上が高校にダンジョンがあるということを植志田に告げると、彼は思わず驚きの悲鳴を上げた。
「そこの主が、幕生君だったの」
「あいつが、ダンジョン主なんか…。そりゃ、あの威圧感も出せるか…」
「威圧?」
「いや、なんでもない。で、どうして伊上とダンジョンと、狩藤が結びつくんだ?」
「二日前、学校に行ったら教師が突然『異空間』が確認されたから集団下校とアナウンスしてたんだけど、私は狩藤に一人で旧校舎にできた異空間入口に連れていたの。多分、アイツの独断だったとは思うけど。なんでか知らないけど、狩藤は特に私のことを目の敵にしていたから異空間に入れることで殺そうとしたんじゃないかな」
―――――だが、その報いを受けたのは狩藤の方だった。
「朝礼の前には、榎木っていうリーダー格だったやつが私にキレていたけど、それも幕生君が異空間に引きずり込んで両脚の腱と声帯がばっつり切られてそこにいたわ。
なんか言葉をかけたら、勝手に消えていったけど、そのあと榎木がどうなったのかは今は分からない。で、ダンジョンの中を歩いていたら幕生君に何故か気に入られていて…」
ダンジョンから出してもらった場所では、息絶えている狩藤が床に転がっていた。
「多分、幕生君がやったんだと思う。私が現実世界に着いた場所が悪くて、また教師に押さえつけられて…その時に、ヨリコさんが現れて、警官の目の前で息巻く主任の頭真っ二つにしたのよ…」
伊上が説明し終わると、植志田は『ご愁傷さま…』と手を神妙に合わせた。
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