37話 ヨリコ(真辺依子)

「幕生くんのような存在が<殺し>ても、それは負の方にしか進展しない…っていうこと?」

「うん。結局は休眠させるだけで更に力が強まった殺人霊にしてしまうのさ。ちなみに、僕らだんじょん主を悪意を持って殺すと、そこは呪われた土地に変わるケースもあるよ~。そうなっちゃうと、もはや除霊とかできなくて近い将来その街は滅びる。

解決できるのは『祭司』の力が必要になる…。その力を持てる可能性があるのが、キョーコなんだ~」

「私が、祭司…?」

「キョーコは僕らに答えを出せる才能があるんだよ。『何もしてないけど』みたいな顔しても、それが事実なんだからね!」

伊上がキョトン顔になる前に、幕生は瞬間移動して彼女の髪をぐしゃぐしゃっと乱暴に撫でた。

「ちょ、幕生君!」

「キョーコは自覚がなさすぎるの!もっとそういう力があるって認めてよ!」

小学生の男児がいたずらするように、エイエイというオノマトペが出そうな勢いで幕生はこれでもかと伊上の髪を撫で繰り回すことで伊上の頭ごとガクガク揺らされる。

「ま・く・い・く・ん!!!!」

伊上から割と本気の怒気が漂い、幕生は宿題をすっぽかし怒られているような状態でやべっ…と硬直したところを、振り向いた伊上は空手チョップを脳天にお見舞いした。

ベシッ、といい音がした。。。

「女性の髪をワシワシ撫でくり回すのはだめよね…???」

「はい、ごめんなさい…」

伊上のチョップは破壊力抜群で、どうしてこの威力なのかが不思議なくらいだ。

幕生でも頭が揺れて意識が朦朧としているのだ。弱い思念ならそれだけで爆散して祓われるだろう…。


「んでさ、この話はさっき伊上に聞いた奴に関わってるんだよね~…とってもめんどくさいことに」

イテテ…と頭のてっぺんを涙目で擦りながら幕生はそう言った。

「私が見たその子と、幕生くんは知り合いなの?」

白金髪ギャルからも、何か知ってそうな雰囲気というか口ぶりを感じたが…。

「知り合いっていいたくないけど、知り合いだね~。腐れ縁化してるライバル?みたいなもんかなあ」

「その子って…何者?あんまり、良い思念ではなさそうだけど…?」

白金髪のギャルの正体。思念にしては殺意が高いように感じられるところを踏まえれば、強力な悪霊になった存在なのだろうか。

「名前は<ヨリコ>。本名は…真辺依子まなべ・よりこだったかな。僕は彼女を一度殺したんだ」


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