18話 時を超えた?女子生徒
「刑事さんが見た女生徒…」
「それも不可解な子で。まるで『今』から3年ほど前に流行ったようなギャルメイク?と服装をしていたんです。私の学生時代はロングスカートが流行っていたのに、その子は極端なミニスカで。そして、私が見た時にその子の背丈くらい大きな鋏を手に持っていたんです」
刑事の言葉に、思わずゾワッとする。
もしや、自分が見たあの不良生徒は―――。
「あの、その子って派手な白金髪でしたか?」
伊上が恐る恐る尋ねると、刑事は一瞬硬直し『はい』と答えた。
刑事が不可解に思っていた女生徒と、あの時に現れた犯人と一致している。
だが、刑事の話を加味すれば、1980年初頭に今どきの風貌をして現れていることになる。
「…まさか。知っているんですか?」
「あの教諭を私たちの目の前で殺したのは、その人です」
「そんな、そんなことが…起こりうるんですかね?」
流石の刑事も困惑を隠せない。一体何が起きているのか分からなくなるくらい、混乱しそうになる。
「刑事さんは先ほどの件で、その子は視えていなかったんですね?」
「ええ。目を逸らしてなどいなかったはずなのですが…瞬きした間に、あの先生の頭部は切断された後でした。そして、それを誰がやったかも、全く分からず」
「幕生と名乗るダンジョンの主は、ダンジョン自体学校のほかにもそれなりにあると言っていました。まだ良く分からないのであくまで憶測ですが…どこかから洩れた思念かもしれません」
「思念。確かダンジョンに引きずり込まれるものは皆何かしらの悪行を積んでいるという話ですか?」
「彼女はことを起こした後、私の目の前から一瞬で消えました。生身の人間ではないでしょう。多分、何かしらの特殊な力を備えている強力な悪霊…というのが私の見解です。それこそ、時を駆けられるくらいの」
普通であれば、ただのオカルトの域を出ない信憑性のない話であり取り合う人などいない。
だが、刑事と伊上は同じ人物を見たのは間違いなさそうだ。
【んー、そこまで!あんまりチクってほしくないな!】
「!?」
二人が沈黙している間に、彼女は突然現れた。
あの教師を殺した、不良少女だ。
電光のようにパッと出現した彼女は鋏は持っておらず、刑事の背後から肩に手を回す。
【おひさ~!バリイケてるじゃん!つーちゃんには劣るけど!】
「ちょ、ちょっと!」
「どうしたんですか、伊上さん」
おかしい。不良少女が明らかに激しく刑事の身体を揺らしているのに、当の刑事は全く気付いていないようだ。
「え、今。今その子が…刑事さんに引っ付いてますよ?」
「どこにですか?」
「肩に手を回して、頭ワシャワシャと撫でまわしてますよ!」
伊上が慌てて言っても、刑事は何も分からないようだ。
【…そっか。視えなくなっちゃったんだ】
親友との間柄のように刑事に触れていた彼女は、とても悲しそうな顔をしてガックリと肩を下ろした。
【萎えぽよ~。とりま消えるわ…。つーちゃんとこ行こ…】
「待って!」
【ばいび~…】
嵐のように一人でテンションを上げ下げして、また不良女子は消えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます