17話 心当たり
やはり、流れ星が落ちていたようだ。
「その時異空間…神隠しのようなものは起きませんでしたか?」
幕生は今ダンジョンが存在しているのは、『条件が合いすぎていた』とも言っていた。
伊上の問いかけに、刑事は少し考えた後に横に首を振った。
「海静高校では、その話はなかったですね。ただ…」
刑事は思い出したくなさげだが、伊上が同じ境遇であることである程度信頼したのか、ゆっくり口を開いた。
「今でも未解決の殺人事件が、一年間で20件程起きました。手口は全て共通して巨大な刃物で斬殺。犯人の姿すら分からない不可解な事件でしたね。その中には、私の親友と幼馴染も含まれていました」
表情こそ変わらないが、やや俯いてギュッ、と両手が固く握られる音が聞こえてくる。怒りもあるのだろうが、それ以上に後悔や悲しみが詰まった悲痛なものだった。
「その一年間が終わると、パタリと同じ手口の事件が無くなったんです。そして、私が学校で嫌われていたのがまるで嘘だったかのように、最初の一年間と同じ満ち足りた学生生活に戻りました」
『そう、本当に嘘のように』と刑事はため息のように漏らした。
「でも、時間だけはちゃんと過ぎていて。親友と幼馴染も還ってこなかった。なんでしょうね、喪失感しかありませんでした」
私の話をしてしまって申し訳ないと一言謝り、刑事は少しスッキリしたような表情で顔を上げた。
「伊上さんは、何か知っていることがあるんですか?今問題になっている、異空間のこと等」
「…ええ。それで、刑事さんに色々聞いてしまったんです。本来は私の知っていることを先に伝えなければならないのに、すいません」
「伊上さんは我々の前で起きた殺人の犯人を目撃しているような素振りを見せていましたね。そのことも、詳しくお願いします」
刑事に改めて、幕生から聞いたことを全て話す。
異空間(ダンジョン)ができた理由、その特徴、管理者が存在すること。そして先ほどの殺人を目の前で行った不良女子生徒のことも分かる限り伝えた。
伊上からの情報を聞いて、刑事は苦笑いしていた。
あまりにも学生の作った雑な怪談のようにしか思えない眉唾物の話だが、伊上が嘘を言っているようには見受けられない。それに、お互い不可解な境遇になった関係者だ。嘘を言ってもなんのメリットもない。
「なるほど。今は異空間が建物内に現れ、そこに問題のある生徒を連れ去って将来を奪う。そしてそれは該当する建築物の意志、ですか」
刑事はゆっくり咀嚼するように、ウンウンと頭を不規則に盾に揺らした。
「じゃああの子は…街の意志だったのか…?」
眉間に深く皺を寄せ、刑事は考え込む。
「先ほどお伝えした事件の時に、出会った女生徒がいたんです」
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