第9話

そして2人の姿が音も無く消えた。


その直後、キィンと刃物が交わる音がし、ドスッと『7つの首』が落ちる音が重なる。


「あっぶねぇ!」

そう言い凶刃を防ぐのはラッツと呼ばれた男。


そして更に

「おっと美香ちゃん、この子は駄目だよ!」

「ん、杏子も駄目。この冬也は生かしておかないと」

男女2人の声が響く。


「パパ《神》!!」

「雫姉さん!」

何やら親しげに話し始める4人。

それを尻目に冬也は今の出来事を理解できずにいた。


(は?何だ?何も見えなかったぞ!何よりあの攻撃を防いだ?百歩、いや一億歩譲ってあの知り合いらしき2人は納得しよう。それよりも、只のギフターズの彼奴がふせいだ?どんなマグレだそれは!)


「ねぇ、そろそろその下手な変装やめたら?健治兄さん!似合ってないわよ」

そう言い放つのは美香。


「おいおい、苦労して変装してるのにそんな言い方は無いだろう?てか、やっぱりバレてたんだな!って、わかっていたなら手加減しろ、手加減!」

苦笑しながら言い放つのは、ラッツに変装していた健治と呼ばれた短髪の好青年。


「あの程度、防げるでしょ、簡単に!そっちの男を庇うとは思わなかったけど。」


「ん、ああ、悪ぶっちゃいるけどドグは良い奴なんだよ!今回の参加も事情があってな。」


自分の名前が出されたことで、今のショックからやっと再起動したドグが言う

「お前、ラッツじゃなかっのか?ちゃんと説明してくれ!」


「ん?ああ、この後ちゃんと説明するから待っててくれ!だよな、父さん《神》!」


「うん、そうだね、1つ1つ整理していこう。」


その会話を聞いていたドグは、

(ラッツ、いや、健治だったか、やっぱりお前も《神》って言うんだな)

そう思うのだった。


「それで、パパ《神》はなんでその女を庇ったの?」

裕介の腕に抱かれているもう1人の生存者を、羨ましそうに見ながら美香は問う。

「ああそれはね、彼女はローズ・アダルト家の子飼いの諜報員なんだ。名はミル・サーシャ。まあ呼ばれ方はNo.9。能力は『映像遠隔念心(ヴィジョン)』!映像と音を特定の人物の頭に直接送れる、中々の能力だね!彼女にはローズ・アダルト家当主に、しっかりと報告をして貰わないとだから。ま、それ以外にも理由はあるけどね。」


裕介の腕に抱かれながら、No.9と呼ばれるその女は驚愕いや、畏怖していた。何故なら

(ありえない!ありえない!アリエナイ!!私の存在はローズ・アダルト家が完璧に隠蔽しているのよ!戸籍さえ無いの!それなのに10年前に捨てた名前すらも知ってるなんて!それにさっきから能力を使っているのに、ノイズばかりで全然使えないし!そして何よりいい男過ぎる!!)

と言う理由から。まあ、最後はよく分からないが・・・



「ああ、そう言う事ね。世界を牛耳る御三家の一つか。・・・いよいよね。それで?冬也を生かす理由は?」


「うん、それは勿論帝王霧夜君の所に行ってもらう為だよ。そろそろ痺れを切らしているだろうから、ご招待だよ。」


それで、と一呼吸整えた裕介は、ほんの僅かな重圧を言葉に乗せ

「さて、君達に『断れない』提案があるんだけど・・・」

と、笑顔で問い掛けるのであった。

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