第8話
「おい、あまり調子に乗るなよ!俺の動きが捉えられる訳がねえだろ!魔導具の性能にあぐら掻いて、適当な事を言うんじゃねぇ!」
冬也は懐から数珠のような物を取り出すと、それを前に掲げる。
(あれを無効化することは、恐らくは無理だ。コレの使用回数は丁度残り2回か、仕方がねぇが使うしかあるまい。無効化が無理なら『存在』を消してやる!)
「『無邪気な悪戯』よ、彼奴らのネックレスの存在を否定し消し去れ!」
冬也は叫ぶと数珠のような物は弾け飛び、眩い光を放つ。
(アレの等級は恐らくコレと同じ伝説級【レジェンダリー】だ!コレは自身の同等以下の等級なら、その存在も因果も無かった物として消し去るぶっ壊れ性能だ!まあ、回数制限が少ないのが難点だがな。)
美香と杏子のネックレスが、すうっと消えていく。
「えっ、えっ?何よこれ!どうして消えちゃうの?訳わかんない!」
美香は叫び慌てふためき、杏子も戸惑いの表情を見せる。
「さて、これでお前らの身を守る物は無くなった。お仕舞いだよ。」
冬也は2人に向かって駆けていく。常人にはおろか、ギフターズの面々にも初動すら見えないスピード。
「チェックメイトだぜ!」
まずは舐めた口をきいていた美香から確実に仕留めるとばかりに、小刀で首を狙う!
そして今度こそ確実に殺した!そう確信した刹那・・・
「な~んちゃって~!残念でした~。」
美香の緩ーい声が聞こえた。
「は?」
と声に出した時には、小刀を持っていた手は抑えられ、知らずのうちに右頬に打撃を受け、盛大に吹き飛ばされた。
「ば、馬鹿な!何故俺がやられている!そ、それに消えたはずのソレがなぜ存在しているんだ!」
「ん?ああコレね!あんたに乗っかってあげただけよ。大体パパ《神》が造ってくれた物が、伝説級【レジェンダリー】ごときに消せるはず無いじゃ無い!で、どうだった?私の演技!」
「ま、まさか神話級【ミソロジー】を造り出したと言うのか?そ、そんな事が有り得るのか?それに何故お前なんかに俺の動きが・・・」
「ああ、私達のオーラがうんちゃらかんちゃらってやつね。あのさぁ、私達が可憐で、か弱そうなのは分かるんだけど、オーラが見えないもう一つの可能性は頭に無かったの?」
「もう一つの可能性?・・・い、いやまさか、そんな・・・俺のレベルは253だぞ。限界突破【リミットブレイク】をやっとの思いで手に入れて、人の限界であるレベル99を凌駕したんだ。そっちの可能性なんて・・・」
「ねえねえ、美香ちゃん、そろそろ終わらせようよ。いい加減長いよ!サクッと全員やっちゃって早く会場に行こうよ!今日は折角パパ《神》に会えるんだよ!」
「あ、そうだねっ!早くパパ《神》に会いたいもんね!じゃ、やろっか!」
いい加減このやり取りに若干の苛立ちを覚えた杏子が、美香を急かす。
自分達にとっては、ギフターズも冬也も同じ有象無象。早いところ終わらせよう、と。
今まで蚊帳の外だったギフターズ達も、不穏な言葉が聞こえてきては身構えるしかなく、2人を睨む。
そして2人の姿が音もなく消えた。
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