第7話

冬也は美香と杏子に問い掛けるも、本心では自分が負けるなんて微塵も思っていなかった。

何故なら、強者特有のオーラが相変わらず見えない。と言うことは、自分よりレベルが遙かに低い弱者と言うことだ。

だから今の自分の状況は、魔導具が思いがけず発動した事に不意を突かれただけ。

だが情報は欲しい。どの程度の物なのかを知り、打破出来そうならする。警戒するべきは魔導具の性能だけなのだから。

もし今の自分の手の内で打破が無理なら退却し、ボスである彼に情報を持ち帰る。

まあ、情報共有の魔導具により既にこの会話は伝わっているだろうが、より詳しく説明するには直接会う事が必要だろう。


「え、聞きたい?ねぇ聞きたいの?このパパ《神》から貰ったこの可愛いネックレスの性能を!」


「ああ、是非ともその素晴らしく可愛いそのネックレスの事を聞かせてくれ、後生だ!」

(よし!この調子ならペラペラと喋ってくれそうだ。予定通りに事が運べそうだな。)


冬也は内心ほくそ笑む。多少無様な姿を晒したが、最終的に目的が達成されれば良い。ギフターズは、後で自分が始末すれば良いし、女達の気配は覚えた。この場で殺すか捕らえることが出来なくとも、次からは居場所を探すのも簡単だろう。

モニターを監視しているだけの簡単な仕事、とはならなかったが、まあ許容範囲内だろうと考えた。

そう、美香の次の話を聞くまでは!


「いいわ、そこまで言うなら説明してあげる!これはね、私達が『最終的に』加えられる危害を全て防ぐの!そこに殺意や悪意、気配が有っても無くてもね。勿論このペンダントに加えられた魔力以上の力は防げないけど、まあそれは不可能ね。最初にああやって説明したのは、そう言っておけば、あんたが直接手を下しにやって来ると思ったからよ、《アサシン》さん。因みに貴方の動きは、ハッキリと見えていたわよ!」


「な、何だその馬鹿げた性能は!い、逸話級のレベルを超えているじゃないか!何故この世界にそんなものが存在するんだ!確かに生産系のジョブ持ちも居る事は確認できている。だが殆どが俺達の仲間だ!そして彼奴らにはそんなものは造れない!そもそもこの世界にいるジョブ持ち《オリジン》の90%は、俺達の仲間だ!突発的にジョブに目覚めたイレギュラーは、お前ら2人だけじゃないって事か?」


演技では無く冬也は取り乱す。『最終的な危害を防ぐ』。そんなものは、ボスである《帝王》ですら造れるか分からない。しかもスキルを使った、自分の全力を無傷で防ぐ物なんて地球に存在して良いはずが無い。

しかも最後に何て言っていた?魔導具の性能に驚き過ぎて危うく流しそうになったが、聞き捨てならないことを確かに言っていた。そう、自分の動きがハッキリと見えていたと!


「私達がジョブ持ち《オリジン》?根本的に違うわよ!それにイレギュラーはあんたたちのボスである《帝王》の霧夜歩夢(きりやあゆむ)の方でしょ!影野冬也、あんたは私達の事を捕らえた様に見えて、逆に誘き出されたのよ!あんたが小刀とクナイで襲い掛かる姿、ゆっくりと良く見えていたわよ!」


(ボスである彼の名前も知られているだと?

《帝王》の正体が霧夜歩夢であることは、裏の世界でも上層の中の上層である、ほんの一握りの人間しか知らないのに!一体こいつらは何者なのだ?だが、これはもうギフターズ共々、この場で確実に始末するしか無い!しかもだ、俺の姿が見えていたなんて、2度も言いやがった!許せねぇ!)


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