第6話
「どうする?美香ちゃん?」
おっとりとした声で話しかける杏子に美香は。
「動かなくて良いんじゃない?折角あちらさんから向かってきてくれるんだし、此処いらで格の違いを見せておこうよ!」
冬也は女2人を目の前にし、暗殺の成功を確信していた!冬也には殺意も悪意も無い。ただ暗殺するために体を動かす、いや、最終的な結果に向かって体が動いているだけ。
暗殺を行う肉体を、精神が俯瞰的に見ている、そんな感じだろう。
小刀とクナイのような物が2人の首に当たる瞬間、冬也は感じた。
「(その命刈り取った)」と。しかしその時
「と、思うじゃん?」
どこか楽しげな美香の声が聞こえた。
「おい、さっきから何をブツブツ言ってやが・・・『ガキンッ、ドスッ、!』「がはっ!」・・・る?」
トートが文句を言いかけた瞬間、何かが弾かれた音と、殴られたような音が同時に聞こえ、今まで居なかったはずの男が、蹲って倒れていた。それを見たドグは焦った様子で
「おいおい、こりゃあ《アサシン》の、影野冬也じゃないか!てことは依頼者の正体は《帝王》か!こりゃまた大物すぎるな。依頼者の正体は明かせないって言われたが、報酬に吊られて受けなきゃ良かったぜ、畜生!」
ドグは唾を飛ばしながらそう喚く。
トートは怪訝な顔で文句を言う。
「あ~ん、何を焦ってるんだよ、おめえは!女2人を殺せば良いだけじゃねぇか!」
「馬鹿か!俺達ギフターズとは格の違う、《オリジン》たるジョブ持ちがやられて蹲っているんだ、その嬢ちゃん達もジョブ持ちだろう。つまりは俺達に勝ち目は無く、依頼は失敗!ここで殺されるか、運良く逃げ延びたところで《帝王》によって粛清されるだけだ!」
ドグの諦めにも似た説明を聞いたトートは青ざめる。いや、青を通り越して白くなった顔で、ギギギとブリキの様な音を立て美香と杏子の方を向く。
「いや、まさか、そんなはずは・・・。は、話が違う!補助系か、阻害系のギフトを持っている女2人を、好きに殺して良いと、そうすれば金が入ると言われたのに・・・。に、逃げる!俺は逃げるぞ!おいヨン、早く魔導具を壊せ!
この空間を現実に戻せ!早く!」
「あ、ああ!」
ヨンが懐から球状の魔導具を取り出した刹那、腕が切り落とされる!
「ぎ、ぎゃあ~!い、いてぇ、いてぇよー」
勢いよく血が噴き出るヨンの右腕を見て、ギフターズの3人はあっけにとられていたが、美香から追撃の凶報。
「逃がすわけ無いじゃない!あと、あんたの右足もないわよ!」
ニコッと花が咲いた笑顔で、トートを指さす。
見ればトートの、右膝から下がズズッとずれて、離れていった。
「がぁぁぁ!足が、俺の右足がねぇ!熱い、いてぇー!ガガががぁぁぁ」
悶絶した様子で転げ回る2人。
残されたドグとラッツは恐怖で固まるしかなかった。
「はあ~?あんた達裏で仕事してるんだから、これぐらいの事は見慣れてるでしょ?特に転がってる2人は被害者に散々やってきてるでしょ!対象が自分達になっただけよ。まだ残ってる手足有るんだから、向かってきなさいよ!」
「美香ちゃん、無理だよ。あの人達どうやって切られたか分かってないんだから。恐怖で心が折れちゃったわよ!」
「全く、根性無いんだから!私達なんて手足が切られようとも、向かっていったわよ!」
ギフターズと、冬也は皆「え、何に?」と思うが誰もそれを口にすることは無かった。
それでも冬也は口を開く。
「この俺が一撃でやられるなんてな。まあそれは良い、同じジョブ持ちなら説明が付く。大方、攻撃特化のジョブだろう!しかしそれよりもだ、何故に俺の攻撃が防げた!悪意も殺意も気配すらも無かったはずだ!何故にその魔導具が発動するんだ、教えてくれ!ここで始末されても良い、最後にそれだけが知りたい。」
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