第5話

モニターを覗きながら、成る程と頷く冬也。

戦闘と呼べるかは分からないが、ギフターズ達の攻撃が開始された後の会話は、全て聞いていた。

女2人の声も何故か全てはっきりと聞こえた。恐らくは攻撃を防ぐ魔導具の発動の際に少し気が緩んで、阻害する力が弱まったのだろうと考えた。

それにしてもあの魔導具、と思う。

冬也の所持している物にも似たような物は確かにある。そもそも空間を隔離する事が出来る物があるのだ、攻撃を防ぐ位の魔導具は無いはずが無い。

まあ、一介のギフターズ達には過ぎた物。知らないのも無理はない。

もっと上の特権階級の権力者達は、当たり前のように持つべき物だが。


「そう考えるとあの2人の奥にいる、パパと呼ばれる男、【神藤裕介】は少なくともそのレベルにいる人物って事か。」


手を出すのは不味いか?と思案する。

しかし、自分のボスである男に勝てるはずが無い、勿論自分にもだ。

明確な上下関係は無い、むしろ同級生の友人ではあるが、自分より強いただ1人の男。

故に勝手にボスと位置付けている。

ここで自分が2人の女を殺して、パパなる男が出て来ても、ボスなら握りつぶすだろう。

物理的にも、社会的にも。

そこまで考え、冬也は動き出す。


「あの魔導具の性能は確かに高いが、残念ながら俺のスキルは防げない。《アサシン》の真骨頂見せてやる!」


そう、冬也は《オリジン》と呼ばれるジョブ持ちの《アサシン》。

あの日、集団転移させられた劣悪で不条理な異世界、『ネシアラ』を生き抜くために力を手に入れたのだ。

『ネシアラ』に呼ばれた時には手に入れていた《アサシン》のジョブ。

レベルも必死になって上げ、力を磨き上げた!

現地の人間、獣人、竜族、魔族、更に召喚により呼び出した地球人達を使い、世界をオモチャ箱のように扱っていた、邪神と呼ばれる存在を倒すために。

《アサシン》それは紛れもない暗殺者である。

人を殺すのに戸惑いなど無い。殺意も悪意も持たず、ただ息を吸うように殺しを完遂する。

標的も殺されたことに、気が付くことはないだろう。それは痛みも知らず幸運なのかも知れないが。

ただただ1つの命が消え失せる、それだけのこと。

だからこそ、あの鉄壁に思える魔導具による防御も、発動することなく殺せる。

冬也は仕事の成功を確信していた。


「さて、さっさと終わらせるか。【視認転移】」


【視認転移】自分の目に映る場所(モニター越しでも構わない)なら、瞬時に移動できるスキル。

時空、空間魔法がジョブにより習得不可能だった冬也が、『ネシアラ』の最難関ダンジョンで入手したスキルブックにより習得。

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