第4話

ガタッ!と、座っていた椅子を勢いよく倒しながら冬也は立ち上がる。


「な、何だ、何が起こった!確かに僅かながらあの美香とかいう女がブレた感じがあった。まさかこの俺が視認出来ない速さで動いたというのか?いや、そんな馬鹿なことはあり得ない!」


独り言にしては大きすぎる声量で、興奮しながら喚いているが、無理もない。

圧倒的強者と自負している自分が認知出来ない事が起こったのだ。そして、ふと思う


「あいつカメラに向かって話してたような、まさかこちらを認識しているのか!・・・いや、無い。あってたまるか!」


カメラ越しにこちらが覗かれている。そんな感じがしたが、有り得ないと頭を振る冬也。


「だけどあそこにいる奴らには、少し荷が重いな。仕方ない出る準備をするか。さて、女2人がどの程度か位は引き出してくれよ、ギフターズ!」



ドグ、ラッツ、トート、ヨンの4人は何が起きているのか、何を言われているのか、分からないといった感じで美香と杏子を見ていた。


「いや杏子お姉ちゃん、ここは地球よ!無駄な殺しは駄目でしょ?パパ《神》に迷惑が掛かっちゃう。」


「え~、美香ちゃんあの人達、皆碌でもない事してるわよ。もちろん殺人も。だからやっちゃってもパパ《神》怒らないと思うなー!悪人のいない世の中を創るんだし。」


呆けている4人の中でいち早く正気に戻ったトートが叫ぶ。


「ふ、ふざけるんじゃねー!お前が彼奴らをやっただと?しかも、手を抜いて?う、嘘に決まっている!他に誰か隠れているに違いない!」


「ま、やってみれば分かるんじゃない?さっさとかかって来なさいよ!トートとヨンだっけ?貴方たちは魂が汚れすぎてるから殺るわよ!」


「けっ、訳の分からないことほざきやがって!おい、ヨン遊ばずにやるぞ、もう許せねぇ!ドグとラッツも加われ!このままじゃ面子が立たねぇ!」


他に誰か居るはずだと周りを警戒しながらも、4人は臨戦態勢に入る。


「ち、仕方ねぇか。おい嬢ちゃん達、俺達をコケにしたこと後悔するんだな!それと、生死不問にした依頼を恨めや!いくぞ!」


『怪力硬化』 『氷結』 『ナイフ生成&追尾投擲』 『燃え盛る炎』

4人は自分達のギフトを発動させ美香と杏子に襲い掛かる。

ドグは銃弾すら弾く硬化と、大きな岩さえ砕く怪力を発動させ殴り掛かり、ラッツは触れると対象を凍結させる氷の塊を5つ浮かべ、2人へと放つ。

トートは50を超えるナイフを生成し、対象にぶつかるまで追いかけ続ける追尾投擲を、ヨンは触れれば人など直ぐに炭化するであろう、大きな炎の塊を放つ!

その結果・・・


ガンッ!ガキッ!カン、カン!ボシュッ!

そこには無傷の2人が、何事も無かったかのように立っていた。


「「「「はっ?」」」」


「さっきも言ったけど、まあこんなものよね。ちなみにこの結果はコレのおかげ。」


そう言うと美香は自信の首に付いている、ハートの可愛らしいペンダントトップの付いた、ネックレスを見せる。


「コレはねー、パパ《神》が造った魔導具。私達に悪意や殺意のある攻撃、行動を全て防ぐの!凄いでしょう!」


「な、何だその高性能の魔導具は!そんな馬鹿げた性能聞いたことないぞ!まさかお前らを見付けるのに、やたらと時間がかかったのは・・・」


「そう、コレのおかげ・・じゃないんだなぁそれは。ま、この話は良いか。じゃ、そろそろ攻撃も出来るところ見て貰おうかな!どうする?杏子お姉ちゃんやる?」


「んー、そうね。パパ《神》の子である私達を犯そうなんて言ってた愚か者達には、直接鉄槌を下そうかしら!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」と、ドグ。


「時間稼ぎはできないわよ?」


「いやそうじゃない。気のせいかも知れないが、嬢ちゃん達がパパと言う度に《神》と聞こえるんだが、そんなことはないよな?」


「え、何を言っているの?パパ《神》はパパよ!頭、大丈夫?」


「いや、それはこちらの台詞なんだが・・・」


緊張感が漂う中、焦りからか訳の分からない質問をした自分と、理解できない答えをされた事に、ドグは頭を抱えるのであった。





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