第2話

「はぁ~、パパ《神》と結婚してぇ~」


「え、駄目だよ美香ちゃん。パパ《神》は、例え血が繋がっていなくても、お前達は間違いなく俺の子供だ!って言ってるんだから。パパ《神》のお嫁さんにはなれないよ!」


「もう、分かってるわよ杏子(あんず)お姉ちゃん。でもパパ《神》を見ちゃうと他の男が塵芥にしか見えないのよ!むきー、11人目のお嫁さんになりたいー!」


「あー、それこそ無理ね。パパ《神》はこの前の10人目の、希望(のぞみ)ママでもうお嫁さんは取らないって公表してるし。それに美香ちゃんあっちの世界リンデシアでパパ《神》の子供と・・」


「あ~、今はその話は良いわよ!それよりさあ、どうする?」


「ん~、どうするって言っても予定通りだし、あっちが態々空間を切り離す道具持ってきてるみたいだし、魔法使わなくても良いから都合良いね!」


「それにしてもギフターズやら魔導具。あいつらがこの世界に与えた魔素の影響が、かなり大きくなってるわね!全く良い迷惑ね!」


「どうやらパパ《神》があの人達をこちらの世界に引っ張って来なかったら、元の世界は滅びていたらしいよ。こちらでは有効活用させて貰おうって、物凄く良い(悪い)顔でニヤリとしてたよ。」


「え~狡い!私もその顔みたかったー!ねぇ、お姉ちゃん後でその顔コピーして私の頭に送ってよ!」


「もう、美香ちゃんたら。それにしても当の本人達はほんの少しだけ違うパラレルワールドに引き込まれたなんて、微塵も思ってないでしょうね!」


「でも何かに違和感を感じてる。だけど違和感の正体が分からない。だから無かったはずの一夫多妻、それをしているパパ《神》に目をつけた。そして本人に辿り着けないから私達子供に目を付けた、か。」


「そしてギフト持ちに見付かるように、ワザと居場所をさらけ出した私達を捕まえに来たのよね。」


「パパ《神》の計画通りなら、これから大きく動くわね!っ、空間が切り離された、お姉ちゃん来るよ!」



空間が切り離された事を2人が感じ取ったと同時に、10人の男達がゆっくりと近付いてくる。

ニヤニヤとしている者、無表情な者、フードで顔が見えない者など様々だが、2人に悪意を向けているのは間違いないだろう。


一方モニターを覗いている人物は、訝しげに頭を捻っていた。

2人の居場所が掴めた時に誘い込む場所は決めていた。だからその場に無数の監視隠しカメラを、設置していた。

どこからでも見えるように、どんな会話も聞こえるようにと。

自分の持つスキルと合わせれば間違いなく死角は無かった。

何せ自分はギフターズ《授かりし者》などではない。ジョブ持ちの《オリジン》なのだから!

1つ、多くても2つしかギフトの無いギフターズと違い多数のスキル(ギフトよりも強いとされる)を持ち効果も桁違い、それが《オリジン》と呼ばれるジョブ持ち。

彼は《アサシン》のジョブを持ち、『異世界ネシアラ』から帰還した本物の強者、名は影野冬也!

彼は自分の事をこの世で《2番目に強い人間》であると自負している。

そんな自分だが、2人の監視対象の話が聞こえない。

姿は見える、だが声が聞こえない。機材の故障も無い。遠耳や盗み聞きなどのパッシブ、アクティブに関わらずスキルを使っているのにだ。

少しだけ嫌な予感がする、するが、無い無いと首を横に振る。そもそも強者特有のオーラが対象者達からは一切見えない。

例え本人が抑え隠そうとしていても、強者と強者の場合、お互い隠したオーラを見抜ける為に意味が無い。周りに余計な圧をかけないために抑えているに過ぎないのだから。

そのため冬也は、何か1つの事柄をとても強く阻害するギフト持ちなのだろう、もしくは2人とも同じ様なギフトで、重ね掛けをすることによって強化しているのだろうと考えた。

「ま、万が一の場合は俺が『視認転移』で、行けば良いだけだしな。」

そう思い考えるのをやめ、モニターを見るのであった。

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