コーヒーと牛乳

ニャンコ餅

第1話

 詩川サラメと詩川キフカ

「ひねくれている」とはこの二人のためにある言葉だとスイは確信している。その可愛らしい容姿に初対面の人間はたいてい油断する。そして次の瞬間には、岩のように固まってしまうのだ。スイが初めて会った時も、

「こんにちは。君たちが詩川兄妹だね。初めまして。」

「タバコくさいおっさんとは口きくなっていわれてるので。」

五歳とは思えない鋭い言葉のナイフだ。三秒ほど絶句したのち、スイはまた口を開く。

「俺のことはスイって呼んでね。じゃあ、行こうか。」

二人の手をつないで歩き出す。

「さんびょーくらいだったね。」

「そうだね、キフカ。いがいとゆうしゅう。」

訳あって、現在三人は一緒に暮らしている。まぁ、それはまた後の話。


 スイ

「胡散臭い」とはこの男のためにある言葉だと、さらめときふかは確信している。突然現れて双子を引き取り、一緒に暮らしている。本名、身元、年齢不詳。見た目からして二十代半ば。身長、180センチ前後。住んでいる部屋は2LDKで双子が来る前は一人暮らし。

「さらめ、スイしごと行くって。」

「うん。」

毎朝11時にスイは出掛ける。サラリーマンという訳ではなさそうだ。

「いってらっしゃい。かえるとき、ティッシュとせんたくせんざいとみりんかってこい。」

「かわいくねぇなぁ。本当に口の利き方が…」

「うるさい。さっさといけ。」

「はー…おじさんは二人の将来が心配だよ。じゃ、行ってくる。」

双子はひねくれている。

「僕らに将来なんて要りませんよ。」

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