第76話 白い世界
異界域の中に入ると、そこには真っ新な画用紙のようにどこまでも白い景色が広がっていた。
「わぁ~…っ、っとと。 随分とぬかるんでますね…! ここ」
一見すると何の変哲もない真っ白な地面に、足を一歩踏み出した瞬間。
深い泥沼に入り込んじゃったみたいに、足が下にズブズブと沈み込んでいって思わず声を上げてしまった。
(ぬかるんでるって言っちゃったけど…。 明らかに泥じゃによね…コレ)
不思議なことに。
この真っ白な液状の足場は、泥のようにぬたついているものの水分は含んでいないのか。
液が靴の中まで入り込んできても、靴下は一切湿った感じがしなかった。
「こんなにぬかるんでるのに、足は濡れないなんて…なんだか不思議だね」
「ねっ。 でも、足が取られて結構歩き辛いよ~」
「そーかー?? 」
沈む地面に苦戦している私とは対照的に、スライム属性であるティアはここの地形と相性が良いのか氷の上を滑るみたいにスイスイと動き回っている。
「ここで無駄な体力を使ってしまわないように、普通に歩ける場所に出れるまでは移動をサポートしてもらいましょうか」
「お、お願いします~! 」
「ふふっ、それじゃあ頼んだわよディンキーちゃん」
「はいなのですっ」
マイさんの肩に腰掛けていたディンキーちゃんが、小さな人差し指で空中に八の字を描けば。
ふわっと、私たちの体が地面から僅かに浮かび上がった。
「これで大丈夫ね」
「ありがとうございます」
「ありがとう、ディンキーちゃんっ」
「いえいえ~これくらいならお茶の子さいさいなのですよっ」
「足元の問題は解決したから、ここからは少し飛ばしていくわよ。 取り合えず、あそこに見える建物を目指して進みましょう」
最川先輩が指さした先には、かまくらをそのまま大きくしたようなドーム状の建造物があった。
「あの建物も真っ白ですね~」
「そうね。 この地面といい、あの建物といい。 どこもかしこも白くて、進んでいる方向や来た道を見失いやすいから…注意しておかないと」
「まるで雪山ね」
「雪山…」
「そ、遭難しないようにしないと…」
「それに…後ろを見てみて」
「後ろですか…? 」
「えっ、うそ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。