第77話 ぽっちゃり?ノンノン、マシュマロっす、ハイ
最川先輩の声に釣られ後ろを振り向くと、そこには真っ白い森が広がっていた。
「ええっ、なんで!? 」
「まだ少ししか歩いてないのに…入り口が見えなくなってる…? 」
「そうね。 それに、私たちはあんな森を通ってきてないでしょ? 恐らく森に見えているあれは幻覚よ、ブラウ? 」
「ええ、見てくるわ」
素早く鳥の姿に変身したブラウさんが低空飛行で森の奥へと進んでいく。
「ブラウの翼の先をよく見てみて」
「えっと…」
「あっ…。 木をすり抜けてる…? 」
「確かに…! 」
アイが呟いた通り、ブラウさんの翼は木の幹をスルリと通り抜けていた。
「今ので分かったわね。 やっぱり、あの森はこの異界域が見せている幻覚よ」
「ブラウちゃーん! もう戻ってきていいわよ~! 」
マイさんが飛んで行ったブラウさんを呼び戻している間に、最川先輩は鞄から何かを取り出していた。
「念のため、侵入口の近くに物理的な目印を残しておいた方が良さそうね…」
「ミツル、戻ったわよ」
「戻ってきてそうそう悪いのだけれど…。 これを侵入口の辺りに立てておいてくれないかしら」
「了解、行ってくるわね」
「何ですか…? 今の棒みたいなヤツ…? 」
「あれは…私のデモンが作った溶けない氷よ。 その子は、自分が作った氷ならどんなに離れていても位置が分かるから、万が一デバイスのマップ機能が使えなくなった時に脱出口を見つけるのに役立つわ」
「すごい…! 」
「そっか! 今ブラウさんが置きに行った氷の元までいけば帰れるってわけですね! 」
「そういうことよ」
「ミツル、置いてきたわよ」
「ありがとう。 それじゃあ、探索を続けましょう」
◇◆◇
「あっ…氷が動いたわ」
「■■■ゥゥ? 」
(氷? )
「あー。 ユキノメちゃんが作った溶けない氷ですな、ハイ。 ユキノメちゃんはどこにいても自分の氷の位置が分かるんで、その。 発信機みたいにつかえるんすよ」
「■■ァァ…! 」
(なるほど…! )
「タヌちゃまばっかりエデンさんとお話ししてずるいわ。 私もお話ししたいのに」
「そうは言ってもですね、ハイ。 エデン氏とお話しするには獣語らいのようなスキルが必須なわけでして…ハイ。 まあ、その、簡単に言うとユキノメちゃんには無理ゲーなんですわ、ドンマイっす」
「なんだか今、すっごくバカにされた気がするわ…! このっ! このっ! 」
「ふぐっ! つ、つべたっ!? ちょ、まっ! 誤解、誤解っす! 雪玉を投げるのは勘弁してほしいっす~!! 」
「■ァ■ゥゥ…」
(ナチュラルに煽るからだぞ…)
見る見る間に雪まみれになっていくタヌちゃまこと、タヌチャチャ。
少々ぽっちゃり…もといムッチリとしたこの狸娘はマイさんと契約するデモンで俺と同じく出番が来るまで盟友界で待機している。
マスターたちに喚びだされるまでの間待機組は一か所に集まっておこうという話になり、ミツル先輩のデモンであるユキノメのハウスにこうして集合しているのだ。
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