第73話 ※この写真はイメージです、実際の
攻略には必要ない荷物を降ろすため、一度ミサキたちが寝泊りするホテルに寄り。
そこから十五分ほど車を走らせると、目的地である異界域の侵入ポイントに到着した。
ここまで運転してくれたドライバーの女性にお礼を告げ車から降りると、見知った少女が俺たちの元に近づいてきた。
「お兄ちゃん…! 会いたかったのっ」
胸に飛び込むようにして駆け寄ってきたセインの少女。
アロメを咄嗟に抱きとめると、彼女は頬を赤らめはにかんでみせた。
「お兄ちゃんと同じグループだって聞いて、ここで待ってたの。 異界域の中に入ったら別行動になっちゃうから……突入前に会えてよかったの」
「えっと…エデン、どういうこと…? 」
「私たちの聞き間違いでなければ…お兄ちゃんって聞こえたような気がするのだけれど」
「■■ゥゥ…」
(これはだな…その)
当然、セインであるアロメが俺の実の妹であるわけもなく…。
さらには俺自身アロメ…というより花園の天使たちとは距離感をまだ掴みかねているので、ミサキたちになんと説明したらいいのか困ってしまう。
「いた~! アロメちゃ~ん!! お~い! 」
アロメを抱えたまま俺が思案していると。
間延びした声と共に、くたくたのジャージを着た女性が手を振りながらこちらに近づいてきた。
「柏ねぇ」
「もう~。 勝手にフラフラしちゃダメだよ~! 心配したんだから~」
「柏森班長」
「あっ、ミツルちゃん~! ごめんね~うちのアロメがお世話になったみたいで~」
「いえ…。 私たちは何も」
(柏森班長…じゃあ、彼女が)
ジャージに縫い付けられた名札にも確かに「柏森」と書かれているので彼女が柏森班の班長である柏森ルリカで間違いないのだろう。
ミサキから貰った資料で事前に名前や顔は確認していたのだが。
資料に載っていた彼女と実際の彼女があまりにもかけ離れていたので、すぐに同一人物であるとは気付けなかった。
(写真で見た時は清楚なお嬢様って感じだったが…)
寝不足なのか大きなクマが出来た目をしばしばと瞬かせながら、寝癖がついた髪を手櫛でとかしている彼女を見るにあの写真は世を忍ぶ仮の姿だったということだろう。
「フラフラしてないの。 アロメはお兄ちゃんに挨拶しに来ただけなの…」
「ん~? お兄ちゃん~? 」
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