第66話 ビショビショでビリビリ
「うにゃ~!! 逃げられたのにゃ! 」
「みんな、気を付けて! 下から何か来るわ…! 」
ブラウが警告を口にした直後から足元が激しく揺れ始めた。
「■■ゥゥ…! 」
(クソッ…! あの野郎の置き土産か…! )
「退避するのにゃ! 」
「にーげーろー! 」
男が叩きつけていった小瓶に引き寄せられるようにして、隆起した地面からソイツは顔を出した。
「な、何か出てきたのにゃ!? 」
「■■ァァ…? 」
(モグラ…なのか…? )
特徴的なとんがり鼻と、つぶらな瞳。
茶色い体毛に覆われたソイツの顔は俺が知るモグラのものに酷似しているが、地中から這い出てきたソイツの体はドーム状の甲羅で守られており、モグラとは全く別の生き物なのだということが分かる。
「グギャァァァ!! 」
「コイツ、出てきて早々にブチ切れてるのにゃ!? 」
「男が投げつけた小瓶から嗅いだことのない異臭が漂てきてたから…それのせいかもしれないわね…」
「■■ゥゥ! 」
(話が通じる相手でもなさそうだ! とにかく仕留めるぞ! )
「やっちまうにゃ!! 」
メアリーは口を大きく開き、最近習得した火球の上位スキル。
トリプルファイアーバレットを甲羅に覆われてない顔を狙い発射した。
「にゃはは! その毛むくじゃらの顔を火事にしてやるにゃ! 」
サッカーボール大の火球が三連続で直撃し、亀モグラの顔面が黒煙に包まれる。
「やるじゃない、メアリー」
「ふふん、どんなもんにゃ! 」
ブラウに褒められ、えっへんと胸を張るメアリーだが。
あれだけの炎をぶつけた割には亀モグラの反応が薄い点がどうも引っかかった。
(まさか…! )
「■■ァァ! 」
(メアリー! コイツ、炎が効いてないかもしれねぇぞ! )
「グァァァァァッ!! 」
俺の不安は的中し。
黒煙の中から”無傷”の亀モグラが飛び出してきた。
「うにゃぁ~!? こっちにくるにゃ~!! 」
「そうはさせないわ! 」
すかさずサポートに入ったブラウが翼をはためかせ巻き起こした竜巻の壁で亀モグラの行く手を阻むと、メアリーはその隙に上空へと退避した。
「た、助かったのにゃ…」
「■■■ァァ! 」
(俺が注意を引き付ける! )
剣圧を放ち、亀モグラの敵視を集めると瞬間移動を連発し奴の視線を撹乱していく。
「メーメーをイジメるワルワルは水ビショビショになっちゃえ~! 」
「にゃ! ティアっ! いまソイツを攻撃しちゃダメなのにゃ!! 」
(マズい…! )
「グァァァァッ!!! 」
なかなか俺の動きを捉え切れず、イラついていた亀モグラは突然大量の水を浴びせてきたティアに狙いを移した。
「ティア、逃げるにゃ! 」
「うわ~!! 」
「いけない…! 」
今まで受けたことのない強烈な殺意を前にティアは恐怖から咄嗟にその場で液状化を発動してしまった。
「ガウッ!!! 」
「ティアが地面ごと食べられたのにゃ…!! 」
「■■ァァ!! 」
(テメぇ、やりやがったなッ!! )
「グッ…! グギャ、グギギギギギ…!!!! 」
「な、なに…? 急に怪物が苦しみだしたわ…」
「グギャァァァァァ!!!!! 」
七転八倒。
泡を吹き、右へ左へジタバタと暴れながらもがき苦しむ亀モグラは口から大量の煙を吐き出すとそのままピクリとも動かなくなってしまった。
「し、死んじゃったのにゃ…」
「ほら、ティアさんこっちこっち! 外に出るですよ! 」
「だっしゅつだ~!! 」
「…! その声…! ディンキー! 目が覚めたのね! 」
「■■ァァ」
(ティア、無事だったか! )
「はいっ! 私がちょうど目覚めた時に、ティアさんと一緒にこの怪物に食べられてしまったので。 この~って! 体の中でいっぱい放電してやりましたよぅ」
「凄いにゃ! お手柄なのにゃ! 」
「ビリビリ、すごかった! 」
「私を捕らえたあの人間たちは……どうやら、もういないみたいですね」
「ええ。 エデンとティアちゃんがあの男から貴女を助けてくれたのよ」
「■■ァァ…」
(いや、俺は…)
あの時マスターの男を殺すことを優先してしまった。
そう口を挟もうとしたが、「しー」というジャスチャーと共にブラウに目配せされその言葉を飲み込んだ。
「そうだったんですね…! エデンさんが斬りかかってきた時はもうダメかと思っちゃいましたが…本当にありがとうございますぅ! 」
「ティアもがんばったぞ~! 」
「はい! ティアさんにもとっても感謝してるですよ! 」
「さて…。 色々と話し合いたいことが出来たけど…。 まずはこれ以上トラブルが起きないうちに帰還しましょう」
「そうするにゃ」
「今回の件は私たちのマスターにも報告する必要がありますしね」
「帰ったらご飯だ~!! 」
「ふふっ、そうね。 お腹もすいたし、帰ったらまずは食事にしましょうか」
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