第61話 成長するスライム娘と変わらないアホ毛

 基本的にマスターと契約したデモンやセインが覚醒昇華するためには、エネルギーを肉体に取り込み一定の水準までレベルアップした後キャラクターごとに異なる特定の素材を規定数摂取する必要がある。


 ゲームと違いこの世界では、覚醒昇華に必要な特定の素材がデータとして存在しているわけではないようなので。


 盟友界にいるデモンやセインたちは、異界域や異世界で手に入れた素材の中から己に合いそうなものをかき集め摂取することで覚醒昇華を試みているらしい。


(だが、俺がかつて所持していたデモンやセインであれば覚醒昇華に必要な素材の種類は記憶しているし。 知り合いが覚醒昇華する際には、それとなくアドバイスして手助けすることもできる)


 流石に、どの素材が幾つ必要なのかまでは覚えていなかったが。


 そこは必要な数より多く集めてしまえば問題にならない。


「メーメー、あっち! あっちいけ! 」


「うにゃ~!! 水を掛けておいて、あっち行けとはなんなのにゃ! ちゃんとお仕置きされるにゃ~!! 」


 幸い、ティアの一回目の覚醒昇華に必要な素材はどれも複数の異世界で入手可能な素材だったので。


 あれから幾度もテストスター12を訪れていた俺たちは既に彼女の覚醒に必要な素材を集め終えていた。


「こらー! 待つのにゃ~! 」


 丸く平たいおはじきのような魔鉱石と冷気を帯びた水色苔を摂取し、無事に覚醒昇華を終えたティアは。


 その背丈を頭一つ分ほど伸ばし以前は気にしなかったお洒落にも興味が出てきたのか、花の形をした氷の髪留めで触手のような頭髪を器用に結わき可愛いツインテールになっていた。


(ツインテールになっても、あのピョコンとしたアホ毛はそのままなんだな…)


「大人しく反省の壺に入るのにゃ~!! 」


「うぅ…エデン~! 」


 とはいえ。


 多少姿が大人びても、メアリーにイタズラを仕掛け追いかけられる日常には変わりがないらしい。


 原作と同じく、一度覚醒昇華で姿形が変化したとしても本人がその気になれば昔の姿に戻ることができるのでメアリーの追跡から逃れてきたティアは元の小さな姿に変身するとテーブルの席につく俺の足元に潜り込みスッポリと隠れてしまった。


「うにゃ~!! あのイタズラっ娘、どこ行ったのにゃ~! 」


「■■ゥゥ」


(まあまあ、とりあえずメアリーも席に着いたらどうだ? ブラウが淹れてくれたお茶が冷めてしまうぞ)


「うぅ~…。 お茶はぬるいくらいが丁度いいのにゃ」


「や、やはりメアリーさんは猫舌なのでしょうか? 」


「違うにゃ、ぬるい方がグイッと一気に飲めるからにゃ」


「ふふっ、ただのせっかちさんみたいね」


 今日は最川班のメンバーで集まり、新しく入手した異世界の鍵を使ってみようという話になっていた。


 班長である最川ミツルとの契約歴が一番長いブラウが、実質俺たちのまとめ役になっているので今はちょうど彼女のハウスで新たな異世界を探索するための準備を行っている最中なのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る